いま読む日本国憲法(27)第41条 立法機関を権威付け - 東京新聞(2016年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016092602000189.html
http://megalodon.jp/2016-0926-1358-00/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016092602000189.html


二十六日に召集される臨時国会では、消費税増税を再延期する関連法案など、さまざまな法案が審議されます。日本国憲法四一条から六四条までの第四章は国会に関する条文が並んでいます。四一条は、立法権が国会に属すると規定。行政権は内閣に属すると定めた六五条、司法権は裁判所に属するとした七六条一項とあわせて、「三権分立」の根拠となっています。
憲法下の帝国議会天皇の協賛機関にすぎず、立法権天皇に属していました。国民主権を柱とした現憲法では、国民の代表者で構成される国会こそ「国権の最高機関」だと四一条で宣言し、権威づけしているのです。
自民党改憲草案も、四一条は現行憲法とほぼ同じ表現です。
四一条は、国会が「唯一の立法機関」とも定めています。ただ、成立する法律は、国会議員が提出したものより内閣が提出したものの方が圧倒的に多いのが現状です。二〇一五年に国会議員が提出した法案は七十二件で、このうち成立したのは十二件(成立率16・7%)。これに対して内閣が提出した法案は七十五件で、成立したのは六十六件(同88%)でした。
国会議員の立法活動を制限する法律や慣例があります。国会法は、議員が法案を提出する場合、予算が必要な法案は衆院五十人以上(参院二十人以上)、予算を伴わない法案は衆院二十人以上(参院十人以上)の賛成者が必要と規定。各党の役員の同意がない法案は、衆参両院の事務局が受け取らないのが慣例です。
国会の憲法論議の中では、こうした議員立法を縛るさまざまな条件を緩和して、議員の立法活動をより活発にするべきだという意見も出ています。
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憲法の主な条文についての解説を、随時掲載しています。


自民党改憲草案の関連表記
国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

関連サイト)
小学生でもわかる憲法入門 - まんがイラスト ぼうごなつこのページ(2014年2月14日)
http://bogonatsuko.blog45.fc2.com/blog-entry-1285.html

関連サイト)
首相、立憲主義を否定 解釈改憲「最高責任者は私」 - 東京新聞(2014年2月13日)
http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20140213#p10

安倍晋三首相は十二日の衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更をめぐり「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と述べた。憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ、歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。首相の発言は、それを覆して自ら解釈改憲を進める考えを示したものだ。首相主導で解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため、政府を縛る憲法立憲主義の否定になる。 
首相は集団的自衛権の行使容認に向けて検討を進めている政府の有識者会議について、「(内閣法制局の議論の)積み上げのままで行くなら、そもそも会議を作る必要はない」と指摘した。
政府はこれまで、集団的自衛権の行使について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法九条から「許容された必要最小限の範囲を超える」と解釈し、一貫して禁じてきた。
解釈改憲による行使容認に前向きとされる小松一郎内閣法制局長官も、昨年の臨時国会では「当否は個別的、具体的に検討されるべきもので、一概に答えるのは困難」と明言を避けていた。
今年から検査入院している小松氏の事務代理を務める横畠裕介内閣法制次長も六日の参院予算委員会では「憲法で許されるとする根拠が見いだしがたく、政府は行使は憲法上許されないと解してきた」と従来の政府見解を説明した。
ただ、この日は憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めることは可能との考えを示した。横畠氏は一般論として「従前の解釈を変更することが至当だとの結論が得られた場合には、変更することがおよそ許されないというものではない」と説明。「一般論というのは事項を限定していない。集団的自衛権の問題も一般論の射程内だ」と踏み込んだ。
内閣法制局長官の阪田雅裕弁護士は、首相の発言に「選挙で審判を受ければいいというのは、憲法を普通の政策と同じようにとらえている。憲法は国家権力を縛るものだという『立憲主義』の考え方が分かっていない」と批判した。
横畠氏の答弁にも「憲法九条から集団的自衛権を行使できると論理的には導けず、憲法解釈は変えられないというのが政府のスタンスだ。(従来の見解と)整合性がない」と指摘した。

立憲主義> 国家の役割は個人の権利や自由の保障にあると定義した上で、憲法によって国家権力の行動を厳格に制約するという考え。日本国憲法の基本原理と位置付けられている。