待機児童解消 多様な施策の総動員で - 朝日新聞(2016年9月23日)

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保育施設を増やしているのに、待機児童が減らない。
厚生労働省によると、自治体が待機児童として公表している子どもの数は4月1日時点で2万3553人で、2年続けて増えた。保育所が見つからないために育休を延長している家庭などのいわゆる「隠れ待機児童」も6万7354人にのぼる。
安倍内閣は17年度末までに待機児童をゼロにする目標を掲げるが、利用希望者の増加に施設整備が追いついていない。
はたして今の整備計画が地域の需要をきちんと反映しているのか。実態を調べ直し、計画を練り直す必要がある。
実際の需要に見合うだけの施設を整えていくには、財源の議論が不可避だ。子育て支援策は消費税収で充実させることになっているが、10%への増税の先送りで不安が高まっている。
保育士の配置を手厚くするといった「質の向上」も、施設を増やす「量の拡大」とともに大切だが、財源のめどが立たず手つかずのままだ。安定した財源の確保は最優先の課題である。

運用面でも改善できる点が少なくない。
例えば、待機児童の8割以上は0〜2歳児が占め、都市部に集中している。比較的整備しやすい0〜2歳児向けの小規模保育所などの活用が効果的だが、子どもが3歳になった時に別の保育所に移るのが難しいとの声が聞かれる。そうした心配を解消できれば、「受け皿」の多様化がもっと進むのではないか。
保育所が見つからない場合は育休を最長1年半とれるが、子どもが1歳になってからでは預け先を見つけるのが難しいとの不安が根強く、0歳から入所させる親が多いとの指摘もある。
厚労省は、育休明けの人がスムーズに子どもを預けられるようにする「入園予約制」の導入を打ち出した。実効性のある仕組みにしてほしい。
育休を最長2年まで取れるようにすることも検討されているが、子育てを女性任せにしたままでは取得は広がらないだろう。多くの女性は、職場の状況や自身のその後のキャリアを考えて1年以内に職場復帰しているからだ。
例えば、育休の一定期間を父親に割り当てる北欧の「パパ・クオータ制」のように、夫婦で育休を取ることを促す工夫ができないか。
長時間労働の是正など、仕事と子育てを両立できる環境づくりも待ったなしだ。「待機児童ゼロ」をスローガンに終わらせないために、様々な課題に並行して取り組まねばならない。