相模原殺傷 障害者ら議論「同じ人間、名前で報道を」 - 東京新聞(2016年9月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092202000137.html
http://megalodon.jp/2016-0922-2043-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092202000137.html

相模原市知的障害者施設「津久井やまゆり園」の殺傷事件を受け、全国の知的障害者ら約千人が参加し、事件について議論する集会が二十一日、横浜市中区であった。「(植松聖(さとし))容疑者が語った『障害者はいらない』という言葉は、子どものころからわれわれに向けられている」。参加者たちは事件を痛みとともに受け止める。事件の犠牲者が匿名となっていることには、参加者から疑問の声も上がった。 (梅野光春、加藤豊大)
集会は、知的障害者の当事者がつくる「ピープルファーストジャパン」(事務局・奈良県三宅町)が年に一度、各地の持ち回りで全国大会を開催。今年は横浜での準備中に事件が発生、テーマを差し替えて「匿名報道」「入所施設の立地」の問題について、各地代表の知的障害者ら四人が意見交換するなどした。
大会の実行委員長、小西勉さん(51)=横浜市=は神奈川県警が「プライバシーへの配慮」などを理由に被害者を匿名発表した点について「仲間として言いたい。誰が亡くなったか分からない」と発言。「せっかく付けてもらった名前を出してほしい。みんな同じ人間なのに…」と続けた。土本秋夫さん(60)=札幌市=も「亡くなっても人間とは扱われず、名前を隠すのは差別だ」と強調した。
参加者からは、全国で施設に入所する知的障害者が約十三万人いるのに、やまゆり園をはじめ、施設が山あいなど不便な場所に多いことへの疑問も出た。中山千秋さん(49)=大阪府東大阪市=は「地域で邪魔にされ、行政や親の都合で入所させられることもある」と課題を挙げた。
東京都東久留米市の小田島栄一さんは「あなたは何もできないんだから、施設に行かないと仕方ないでしょうと言われたこともあった」と振り返り、「障害者は地域に『いらない』と言われる」風潮があると指摘。「知的障害者も地域でのびのび暮らしたい」と求めた。一方で会場から「施設にもいい点はある」という意見も出た。
集会の最後に、参加者が花束や折り鶴を犠牲者に手向けた。大会は二十二日に、障害者施設での虐待事件などをテーマにした分科会を開いて閉幕する。

◆植松容疑者の鑑定留置開始
横浜地検は二十一日、入所者十九人を刺殺した殺人の疑いで送検された植松聖容疑者(26)の精神鑑定を行うため、鑑定留置を始めた。一月二十三日までの約四カ月間。
地検が鑑定を依頼した精神科医が、植松容疑者と面談するなどして犯行当時の責任能力の有無を調べる。この間、神奈川県警は二十七人に重軽傷を負わせた殺人未遂容疑などで追送致し、地検が起訴するかどうか一括して判断する。
植松容疑者は逮捕後の取り調べに、「障害者がいなくなればいいと思った」などと障害者への差別的な供述を繰り返し、大麻成分の陽性反応も出た。鑑定では大量殺害に至った動機や、犯行時に薬物の影響がなかったかなどが焦点となるとみられる。
植松容疑者はこれまでに殺人容疑で三回逮捕、送検された。