(筆洗)<無駄買いをさせて景気は上昇中>芝田緑山人。 - 東京新聞(2016年9月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016092202000157.html
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小沢昭一さんの『川柳うきよ鏡』に、一九九六年に詠まれたというこんな句がある。<無駄買いをさせて景気は上昇中>芝田緑山人。
この句に寄せて、小沢さん曰(いわ)く「景気が一時よりよくなったって? 内需好調か。だけど景気、景気って、俺たち、どんどん物を買わなくちゃいけないの? 昔思えば何でも揃(そろ)ってんだよ。ゼイタクしろっていうのかね…えっ、どうなの」
今「どうなの」と聞きたいのは、アベノミクスの効果だろう。日銀が異次元の金融緩和に踏み切り、円安・株高で企業を勢いづけ、賃上げを促して消費を増やす…ということらしいが、現実はどうか。
株高云々(うんぬん)と言っても、日銀の調査によれば、預貯金など金融資産を持たない人の割合が過去最高の水準になっているそうだから、どんどん物を買っている余裕があるはずもない。
日銀は過去の政策を検証した上で、さらに金融緩和を続けていくことを決めたが、多くの人にとってはアベノミクス自体が、「異次元」の出来事のように思えるだろう。
経済誌エコノミスト編集部が世界経済の先行きを分析した『通貨の未来』で、アベノミクスは<選挙で有権者の支持を獲得する効果はあったが、実際に経済に与えている効果は限定的で、当初の期待に応えられてはいない>と評されている。なるほど、選挙対策としてなら、効果は実証済みの「異次元」の策だ。