安保法成立きょう1年 廃止まであきらめない:千葉 - 東京新聞(2016年9月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201609/CK2016091902000134.html
http://megalodon.jp/2016-0919-1102-54/www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201609/CK2016091902000134.html

安全保障関連法の成立から十九日で一年。違憲の疑いを抱えたまま、三月に施行され、自衛隊の新任務の訓練も始まった。安保法の本格運用が目前に迫り、県内からも「法律の廃止まであきらめない」「発動を許さない」との声が上がり続けている。 (服部利崇)
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に十一月に交代で派遣される陸上自衛隊部隊が先月から、「駆け付け警護」など新任務の訓練を始めた。安保法で武器使用基準が緩和され可能となった任務だが、隊員が戦闘に巻き込まれる可能性も高める。
自衛隊員が人を殺したり、殺されたりする可能性がさらに高まっている。安保法の発動を止めたい」。「安保法制に反対する千葉大学教職員OG/OBの会」呼び掛け人で、同大名誉教授(物理学)の木村忠彦さん(72)=千葉市若葉区=は訴える。
安保法は学問の世界にも暗い影を落とす。防衛省は二〇一七年度予算の概算要求で、軍事に応用できる基礎研究費の助成に百十億円を求めた。一六年度は六億円で十八倍も増えた。木村さんは「『軍事研究はしない』という大学側のスタンスを、安倍政権が切り崩そうとしている。一研究テーマの助成額は何千万円。食い付く研究者が出てくるかもしれない」と警戒する。
「安保法成立から一年。安倍政権はやれることは何でもやってきた」と語るのは、「県障害者・患者九条の会」事務局長で車いすで生活する三橋恒夫さん(67)=千葉市中央区=だ。
三橋さんは三月の法律施行後も、通信傍受法の対象犯罪の拡大、「共謀罪」法案提出の動き、沖縄・高江の米軍施設建設に自衛隊機投入があったと指摘。「戦争のできる国に向け、訓練開始などが正面の話とすれば、からめ手にまで着手している」と懸念する。
「裏側で進むのが福祉の切り捨て」という。政府は高齢化で介護費用が増大し続けることを理由に、サービスの削減を進めようとしている。三橋さんは「公助や共助より自助を過度に強調する社会に逆戻りさせている」とした上で、「国は外交や防衛に専念するから自分のことは自分で、ということ。安保法がめざす社会と福祉は両立しないことが鮮明となった」と話す。
船橋市に住む専門学校生かなんさん(19)は一年前、国会前や千葉市の抗議デモに参加した。安保法成立には「あれだけ多くの人が(反対に)動いただけに残念だった」と振り返る。
来春から美容師として働く。就職先も内定、免許取得の国家試験に向け勉強を続けている。人を笑顔にして自分も笑顔になれるのが美容師の魅力という。「でも戦争に向かう社会になれば、『ぜいたくだから要らない』と真っ先に否定される。美容師の仕事には平和な世の中が必要」
初めて投票した夏の参院選では、安保法廃止への道筋はつけられなかった。「道のりは遠いけれど、あきらめない。忘れず、学び、言葉にしていろんな人と話す。廃止へ努力を続けたい」