<辺野古訴訟>沖縄県敗訴 問題解決の制度にもろさ - 毎日新聞(2016年9月16日)

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地方分権、民主主義の流れに逆行する判決だ」。米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設を巡る初の司法判断は、福岡高裁那覇支部が県側の主張を全面的に退けた。
1999年の地方自治法改正で国と地方が対等の関係になって以降、国の指示に地方が従わないことの適否を審査する初の司法判断として注目されたが、判決は、埋め立て承認を取り消した処分に対する国の是正指示に従わない知事の不作為を違法と結論付けた。
判決が重視したのは、行政が出した処分に対する信頼は法的に保護されるべきだという「行政の信頼保護」の原則だ。処分が簡単に変更されれば、維持されることを前提に活動する側の不利益が大きいため、変更は制限されると解釈される。判決でも、前知事の埋め立て承認の判断に法的欠陥がない以上、知事の取り消し処分は違法で国の是正措置に従うべきだと判断した。
一方、今回の紛争を通じて明らかになったのは、国と地方の主張が決定的に衝突した場合に問題解決を図る制度の脆弱(ぜいじゃく)さだ。総務省に新設された第三者機関「国地方係争処理委員会」が、知事に対する国の是正指示の適法性について判断を避けたのもその一例といえる。今回の判決が確定しても、知事は埋め立て承認の「撤回」など別の知事権限を行使し、再び法廷闘争になることも予想される。
判決は「互譲の精神で双方で解決策を合意することが地方自治法の精神から望ましいが、その糸口すら見いだせない。中立で公平な判断をすべき裁判所がその責務を果たすしかない」と苦渋の判断だったことを示した。国が判決を「錦の御旗(みはた)」として移設を強行すれば、禍根を残すことは明らかだ。今後も沖縄県との真摯(しんし)な対話を続ける姿勢が不可欠だろう。【吉住遊】