大飯原発「基準地震動評価」が批判されるワケ 島崎氏の指摘を規制委は否定したが… 原発再稼働の是非 - 東洋経済オンライン(2016年08月17日)

http://toyokeizai.net/articles/-/131955

関西電力大飯原子力発電所の基準地震動(想定される最大の揺れ)は過小評価されている。(きちんと計算すると、大地震の際には実際の揺れが)現在の基準地震動を超えてしまうことは確かだ」
原子力規制委員会で2014年9月まで委員長代理を務めた島崎邦彦・東京大学名誉教授(地震学)による問題提起は、原子力規制委による十分な検証計算が実施されないまま、いったんお蔵入りとなった。


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再稼働に支障が出るから再検証はできない!?
長沢啓行・大阪府立大学名誉教授(生産管理システム)は、「原子力規制委の田中委員長は、入倉・三宅レシピしか原発の審査で使えるものはないと語っているが、この認識は間違っている」と指摘する。
脱原発市民グループ「若狭ネット資料室」室長を務める長沢氏は、これまで、九州電力川内原発四国電力伊方原発など数多くの原発地震動評価の実態を詳細に検証。再稼働差し止め訴訟などで意見書を提出してきた。
その長沢氏は次のように指摘する。
「政府の地震調査研究推進本部が使っているもう一つの予測手法(レシピ)で再計算したほうがより正確である一方、計算された地震動は関電が設定した現在の基準地震動の1.5〜1.6倍程度になる。しかし、そうなると、大飯原発3・4号機では2012年3月のストレステスト(耐震余裕度テスト)で算出された炉心溶融につながる『クリフエッジ』(限界点)を超えてしまうので、原発は再稼働できなくなる。ほかの原発も再稼働が困難になる可能性が高い。だから、(今まで原発の審査で実績がないなどとの理由で)推進本部が用いている手法による再計算を拒んだのではないか」
このように、基準地震動をめぐるやりとりには政治的な思惑がつきまとう。
とはいえ、事態は前に動き始めている。原子力規制委によって島崎氏が持ち掛けた論争はいったん幕引きとなったが、原子力規制庁の事務レベルでは、「熊本地震の知見を踏まえると審査のやり方の再検討は不可避」との見方が広がり始めている。
いみじくも島崎氏は、「科学的事実をいかに反映させるかは、審査にたずさわる人たちの判断や見識による」と語っている。地震動評価のあり方をめぐる議論は、遠くない時期に再開される可能性が高い。