核のごみを地中に10万年「理解得られぬ」 今田名誉教授、拙速な計画を批判 - 東京新聞(2016年9月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201609/CK2016090202000134.html
http://megalodon.jp/2016-0902-1039-07/www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201609/CK2016090202000134.html

日本学術会議で「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」の最終処分に対する提言をまとめてきた東京工業大の今田高俊名誉教授が、本紙のインタビューに答えた。経済産業省が一日の有識者会合で、十二月にも最終処分地に適した地域を色分けして示す日本地図を公表すると確認し、最終処分を急ぐ方針をあらためて示したことについて今田氏は「拙速で、国民の理解を得るのは難しいだろう」と批判した。 (吉田通夫)

−学術会議の提言は「科学的な知見」に限界があることを認めている。
「『科学的な知見』というと絶対の真理に聞こえるが、東日本大震災福島第一原発が覆した。核のごみは最短一万年、最長十万年にわたって人類から隔離しなければならない。一万年前は縄文時代。十万年前、私たちはネアンデルタール人だった。将来からみれば私たちもそういう立場だ」

−政府は核のごみを地下三百メートル以深に埋める方針を変えていない。
「核のごみを放置できないのは事実だが、一部の学識者と行政が出した結論に国民を誘導しようとしても、理解は得られない。行政などの利害関係者から独立した立場で科学者同士や市民同士が話し合う必要もある。国民が科学的な知見の限界を知りつつ、何らかの処分方法について合意できるよう、さまざまな議論の場を設けなければならない。そのために五十年間は最終処分を保留し暫定的に保管することを提案した」

−政府は昨年の自治体向け説明会を非公開にして批判を浴びた。
「秘密主義が見え隠れしている。一部の人たちだけで決めてしまうのではないかという不信が広がれば国民的な合意はできない」

経産省原発マネーと同じように、処分場の受け入れ自治体に交付金を給付する。
「カネで自治体を釣る手法は、市民が主導する民主主義的な合意プロセスを台無しにしてしまう。政府や電力会社の原子力関連の機能を移転して町づくりに生かすなど、カネに頼らない支援が望ましい」

−政府は、原発の再稼働と処分場の問題は別だとして、ごみの行き場がないまま原発の再稼働を急いでいる。
「理解できない。原発を動かせば核のごみが出るのだから処分場の問題と密接に関係する。私たちは核のごみを無尽蔵に増やさないため上限を設ける『総量規制』も提言している。私たちの調査では総量規制への賛成者の割合が高い。国民は脱原発に向けた着地を求めているのではないか」
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◆最終処分場をめぐる経緯
「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」は、使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す「再処理」をした後に残る廃液。人が近づくと数十秒で死亡するほど強い放射線を出すため、政府は溶けたガラスに混ぜて固めて金属容器に入れ、地下300メートル以深に処分場をつくり埋設しようとしている。最長10万年の隔離が必要で、地震が頻発する日本では安全への懸念が根強い。
最終処分場を決めないまま原発を推進してきた国の政策は「トイレなきマンション」と批判され、2013年には小泉純一郎元首相が脱原発を主張する理由に処分場がないことを挙げた。政府は最終処分地の受け入れ自治体の立候補を待ったが決まらず、15年5月に自らが主導して決める方針に転換。今年8月には海底に埋める案も検討することを明らかにした。

日本学術会議 1949年に設立された内閣府が管轄する特別機関。「科学者の代表機関」や「科学者の国会」などと呼ばれ、84万人の学識者の中から210人が任期6年の委員に選ばれる。法学や経済学など30の学術分野に分かれた分野別委員会のほか、社会的に重要な課題に対しては課題別委員会を設置。政府から独立した立場で政策を提言する。海外の学術団体との連携なども担う。