参院合区解消論 改憲につなげる強引さ - 東京新聞(2016年8月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016082402000134.html
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七月の参院選から導入された「合区」の解消を求める意見が出ている。各都道府県から最低一議員を選出する考えは分からないでもないが、憲法改正につなげるのは強引すぎるのではないのか。
合区とは選挙区を統合することである。七月の参院選では、それまで別々の選挙区だった鳥取・島根両県と徳島・高知両県をそれぞれ一つの選挙区に合区した。
これに対し、全国知事会は七月、地方の声が国政に届きにくくなるとして合区の解消を求める決議を採択した。自民党は合区解消を含む選挙制度の検討チームを九月にも発足させる、という。
しかし、合区は二〇一〇年と一三年の参院選の「一票の不平等」を「違憲状態」と断じた最高裁判決を受け、不平等解消を目指して導入されたものだ。
さらに、憲法は国会議員を「全国民を代表する」と定める。決して「地域の代表」ではない。
合区で自県の代表を送れなくなる可能性が生じることへの抵抗感は理解できなくはないが、憲法に規定のない都道府県の枠組みよりは、憲法に定める「法の下の平等」を優先させるべきであろう。
七月の参院選で最大格差は一三年の四・七七倍から三・〇八倍に縮まったものの、依然、憲法違反だとして選挙無効を求める訴訟がすでに提起されている。
選挙区間の格差を放置したままの合区解消など、論外である。
一方、現行制度を維持した上で不平等を解消しようとすれば、人口減少県の合区が拡大し、大都市圏の定数は増え続ける。定数振り替えによる不平等解消は限界だ。
改正公職選挙法は付則に「一九年の参院選に向け、選挙制度の抜本的な見直しを検討し、必ず結論を得るものとする」と明記している。抜本改革は急務だ。
この際、参院自民党が葬り去ってきた、全国を十程度の地域に分けるブロック制の導入など、抜本改革に向けた検討を直ちに始めるべきだ。残された時間は少ない。
見過ごせないのは、合区解消を憲法改正につなげようとの動きだ。
自民党参院選公約で「都道府県から少なくとも一人が選出されることを前提として、憲法改正を含めそのあり方を検討します」と掲げた。
地方が求める合区解消を、憲法改正の突破口にしようとの魂胆なのだろうが、抜本改革を怠ってきた自らの怠慢を棚に上げ、党是としてきた憲法改正に突き進むのなら党利党略との誹(そし)りは免れまい。