(いま読む日本国憲法)(22)第28条 労働組合の権利規定 - 東京新聞(2016年8月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016082202000159.html
http://megalodon.jp/2016-0822-0954-25/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016082202000159.html


労働者を守る三つの権利「労働基本権」が、短い一文に詰め込まれています。
労働者が使用者と対等な立場で労働契約を結ぶため、労働組合をつくる権利が「団結権」。労働組合が使用者と交渉する権利が「団体交渉権」。公平な団体交渉を行うため、ストライキなどの争議を行う権利が「団体行動権」(争議権)です。労働基本権に基づき、労働組合法や労働関係調整法で、具体的な労使間のルールが定められます。
戦後の日本社会では、労働基本権に加え、独特の終身雇用制や年功序列賃金が雇用制度を補完し、労働者は安定的な雇用環境の中で働けました。バブル経済の崩壊以降、景気低迷や規制緩和によって派遣やパートなどの非正規労働者が増加。最新の労働力調査では、二〇一六年六月時点の非正規労働者は労働者の37・4%を占めます。
非正規労働者の多くは労組に未加入で、待遇改善などを主張しにくく、正規と非正規の格差解消が課題となっています。安倍政権は、同じ仕事に同じ賃金を払う「同一労働同一賃金」の実現や長時間労働の是正などを柱とした「働き方改革」の実行計画を一六年度中にまとめる方針です。
二八条を巡る主な論点として、公務員の争議権の問題があります。公務員は一五条で「全体の奉仕者」とうたわれているため、争議権は認められていません。その代替措置として、人事院勧告があります。
野党を中心に公務員の労働基本権を拡大すべきだという意見がありますが、自民党は慎重です。同党の改憲草案は二八条に二項を新設し、公務員の労働基本権の制限を明文化しました。草案Q&Aでは「現行憲法下でも、人事院勧告などの代償措置を条件に、公務員の労働基本権は制限されている」と説明しています。



自民党改憲草案の関連表記(新設部分)
公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。