築地市場の豊洲移転問題 土壌汚染対策工事は完了していない!? - 日刊SPA!(2016年8月19日)

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新しい市場に生まれ変わるのだから歓迎ムードかと思いきや、意外にも水産仲卸業者から大反対運動が起きているのだという。築地でいま、一体何が起きているのだろうか?
国内最大規模の土壌・地下水汚染の土地に移転!
豊洲市場がある場所はかつて東京ガスの石炭を原料とする都市ガス製造工場があった。製造工程で有害物質が副生されたせいで、敷地土壌と地下水が汚染されてしまったのだ。豊洲の土壌・地下水汚染に詳しい日本環境学会会長の畑昭郎氏が言う。
「’02年の東京ガスの調査では、土壌溶出量ベースで環境基準の1500倍に上るベンゼン、490倍のシアン化合物、49倍のヒ素、24倍の水銀、9.3倍の鉛、1.4倍の六価クロムなどが見つかりました。これだけでも大変な汚染ですが、’08年に都が立ち上げた専門家会議で調査を行ったところ、さらに衝撃的な結果が出たのです。なんとベンゼンが土壌から4万3000倍、地下水から1万倍、シアン化合物は同じく860倍と、130倍も検出されました。国内で最大規模の土壌・地下水汚染です」
ベンゼンには発がん性があり、シアン化合物(青酸カリ)は猛毒。その他の化学物質も人体に悪影響を与えることで知られる。慌てた都は対策として地盤面から2m下の土壌を入れ替え、なおかつ2.5mの盛り土を実施。地下水も環境基準まで浄化する工事を行った。現在、都は「豊洲市場の汚染は存在しない」とのスタンスだ。
だが畑氏は、対策工事は不完全でリスクは大きいと警告する。
汚染対策をすれば、用地取得以上の費用がかかる
「土壌汚染は敷地全体の11%しか調査していないため、特に深い部分の汚染実態はわかっていないなどの問題があります。有害物質の中には地中から地上に蒸発して上がってくるものもあるため、魚の汚染だけでなく豊洲で働く人の健康も危ない。これらの汚染対策工事をきちんと行うためには5000億円は必要。ですが、それでは塩漬け土地の基準といわれる用地費に占める対策費の比率20%以上どころか、豊洲の用地取得費も超えてしまう。市場を豊洲に移すこと自体が馬鹿げているのです」(畑氏)
加えて、市民団体の調査で都が法律で定められている「帯水層底面調査」を実施していなかったという実態も明らかになっている。都は、「土壌汚染対策工事は完了した」と発表していたが、333もの区画で実施していなかったのだ。
しかも、そのうち69区画では調査が未実施にもかかわらず、汚染対策が完了していたことにしていたという。公表資料を丹念に読み込み、この問題を見つけた一級建築士の水谷和子氏は「都は豊洲市場の敷地内にまだ化学物質の汚染があることを知っているのに、もう残っていないという。これでは二枚舌です」と怒りを露わにしている。
― [築地市場豊洲移転]新たな大問題 ―