高校生、未来へ刻む17音 平和の俳句 戦後71年 - 東京新聞(2016年8月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081502000105.html
http://megalodon.jp/2016-0815-0915-25/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081502000105.html

七十一年の歳月を重ねた終戦の日の「平和の俳句」に選ばれたのは、戦後半世紀以上を経た二〇〇〇年に生まれた埼玉県立所沢高校二年生の

<夏の日を何度も何度も七十年>

作者の小野寺渉(わたる)さん(16)は、自分の年齢の四倍を超す長い戦後に思いをはせ、「戦争経験者はいずれいなくなる。でも忘れちゃいけない記憶だと思います」と言う。 (矢島智子)
所沢高校で国語を指導する山本純人(すみと)教諭(38)は「生徒たちに表現する手段を持ってもらいたい」と頻繁に作句の課題を出している。「平和の俳句」には昨年十二月掲載分に一年生二百四十三人が応募し、男子二人が入選。今回は二年生二百三十二人が投稿し、小野寺さんを含む三人が入選した。
十三日に掲載された

<夏風や僕らはみんな生きている>

を詠んだのは、野球部で投手兼外野手の嶌田瑛佑(しまだえいすけ)さん(17)。「平和って考えれば考えるほど難しいテーマ。でも、世界では今も戦争で苦しんでいる人がいる。一日一日生きていることは当たり前じゃない」。そんな思いを五七五にぶつけた。
十四日掲載の

終戦日のんびり泳ぐ金魚かな>

を詠んだ近藤桃圭(ももか)さん(17)は「終戦の日のほっとした感じ」を金魚の泳ぎと重ね合わせた。この夏初めて短期の語学留学を経験。将来は空港や旅行会社など語学力を生かす職場で働きたいという。
二年生は九月末に修学旅行が控えている。行き先は生徒が投票で選んだ沖縄。小野寺さんが詠んだ<夏の日〜>も、雲一つない青空の広がる沖縄を思い描いたという。現地では、戦時中に住民や兵士がこもり、大勢が犠牲になったガマ(洞窟)や首里城などを見学するほか、四、五人のグループで一般家庭に宿泊する民泊も計画されている。そこで見聞きし、感じることが、若い心をさらに育む。