(いま読む日本国憲法)(21)第27条 弱い立場の労働者守る - 東京新聞(2016年8月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016081102000224.html
http://megalodon.jp/2016-0811-1533-53/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016081102000224.html


全ての国民に、働く権利があることを定めた条文です。この条文に基づいて、職業安定法雇用保険法労働基準法など「勤労の権利」を守るための法律がつくられています。言い換えれば、国は、国民が働く機会を得られるような施策を行い、働けない人に対しては生活の保障をするよう求められているわけです。
二七条一項は、働く権利だけでなく働く義務も定めていますが、労働を強制されたり、働かない人が罰せられたりするわけではありません。働く能力も機会もある人は仕事をして、だれかの役に立とうという精神的な規定などと考えられています。
二項で、賃金や就業時間など労働条件の基準を「法律で定める」としたのは、雇用する側に比べて立場が弱い労働者を保護するためです。労働者が、著しく低い賃金や長時間労働を押しつけられることがないよう国の関与を求めているのです。
三項で児童の酷使を禁じたのも、社会的弱者と言える子どもが、しばしば過酷な労働を強いられてきた歴史を踏まえたものです。
自民党改憲草案も、二七条については現行条文とほとんど変わりません。
むしろ問題はリストラや失業、過労死、サービス残業などが現実に横行し、二七条の目指す理想とかけ離れてしまっていることです。有効求人倍率が全体的に回復傾向にあるとはいえ、雇用者の四割前後を依然、非正規労働者が占めています。「ブラック企業」の問題も深刻です。
現実を二七条に近づけるための、不断の努力が国に求められています。

自民党改憲草案の関連表記
全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
何人も、児童を酷使してはならない。