ヘイトデモ中止勧告 救済申し立て崔さん「尊厳、認めてくれた」:神奈川 - 東京新聞(2016年8月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201608/CK2016080402000144.html
http://megalodon.jp/2016-0804-0957-47/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201608/CK2016080402000144.html

「うれしくて泣きっぱなしです」。一月に川崎市川崎区内であったヘイトスピーチ(憎悪表現)を伴うデモは人権侵害にあたるとして、主催した男性に同様の行為をしないよう勧告した法務省の決定。人権救済を申し立てていた在日コリアン三世崔江以子(チェカンイジャ)さん(43)は本紙の取材に対し、素直に喜びを表す一方、インターネット上での個人攻撃に毅然(きぜん)と立ち向かう決意を語った。 (小形佳奈)
勧告は男性の言動を「人格権を侵害する不法行為で、人間としての尊厳を傷つける不当な差別的言動」と断じた。さらに六月にヘイトスピーチ対策法が施行されたことを踏まえ、「不当な差別的言動のない社会の実現を希求する気運が高まっている」と指摘した。
崔さんは三月、人権救済を申し立て、実名で会見した。「川崎市や警察に助けを求めても『根拠法がない』と言われ続けた。だから司法に訴えた」
その後、今回勧告を受けた男性が六月五日に企画した同様のデモをめぐり、川崎市が集会のための公園使用を不許可とし、横浜地裁川崎支部も男性に対し、川崎区内で民族差別をなくす活動を進める社会福祉法人「青丘社(せいきゅうしゃ)」の事務所周辺でのデモを禁じる仮処分を決定した。
そして今回の勧告。いずれも対策法を踏まえての判断で、「私たちの尊厳を行政機関がそろって認めてくれた。法律の力はすごいですね」と崔さんは声を弾ませる。
ただ、三月の会見後、インターネット上に崔さん個人を中傷する書き込みがひんぱんに見られるようになったという。「電車で隣に座った人が、私を攻撃する書き込みをしているかもしれないと思うと怖い」としながらも、「泣き寝入りはしない」と誓う。
対策法は付帯決議で、ネット上での差別的言動解消に向けた施策の実施を国や地方自治体に求めている。崔さんは今後、法務省総務省に具体的な救済対策を、市には人種差別撤廃に向けた条例制定を要望していくという。