規制委、大飯地震動「見直さず」 新基準審査優先で結論急ぐ - 東京新聞(2016年7月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016072802000130.html
http://megalodon.jp/2016-0730-0949-40/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016072802000130.html

原子力規制委員会は二十七日、関西電力大飯(おおい)原発福井県)で想定する地震動が過小評価されているとの指摘を巡り、関電の手法は妥当で、現状では見直さないことを決めた。原発の安全性を考える上で、極めて重要な議論だったが、「この問題が解決しないと、新基準の審査結果が出せない」と、早期の幕引きをした。
議論の発端は、大飯原発のように震源断層が垂直に近いと、関電の計算式では地震動を数分の一に過小評価するとの前規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授からの問題提起。
規制委事務局は、別の式で再計算を試みた。その過程で浮かんだのは、計算には多数の値が使われ、設定によって地震動の値はいかようにも出せることと、規制委も電力会社の計算内容を完全にはつかみ切れていないことだった。
別の式を使えば関電の値より大きくなるはず−。その見込みに合わせようと、事務局は断層のずれる面積などの値を操作し、無理に計算を進めたが、規制委メンバーからは「科学を逸脱している」と指摘された。関電と同じ式を使った結果も出したが、同等の値になるはずなのに、半分以下と大きな開きが出た。事務局は「関電とは、地震波を合成する際のプロセスが異なるためではないか」と釈明している。
地震動をはじく式は、過去の地震をうまく説明し、予測に活用しようと多様なものが考案されてきた。ただし、見えない地下を相手にする上、過去の事例から外れた地震も起きてきた。少なからず誤差が生じることは避けられない。
誤差を見越して強度を高め「想定外」をなくすのが新規制基準の柱の一つ。規制委は連動する断層の長さなどを「安全側で審査している」と、評価手法は見直さないと結論づけた。だが、全国で起きている原発再稼働の訴訟では、まさに過小評価か否かが重要な争点。今回の一件は、裁判にも影響を与えそうだ。 (山川剛史)