受刑者の選挙権制限は「合憲」 地裁「適格性に疑問」- 朝日新聞(2016年7月21日)

http://www.asahi.com/articles/ASJ7J03YRJ7HPITB01R.html
http://megalodon.jp/2016-0727-0926-25/www.asahi.com/articles/ASJ7J03YRJ7HPITB01R.html

受刑者に選挙権を認めない公職選挙法違憲だとして、広島刑務所に服役中の50代の男性受刑者が選挙権があることの確認と、国家賠償120万円を求めた訴訟の判決が20日、広島地裁であった。末永雅之裁判長は訴えを退け、合憲の判断を示した。
同様の裁判では、大阪高裁が2013年に「一律に制限するやむを得ない理由があるとは言えない」と違憲の判断を示しており、司法判断が分かれた。
この日の判決は、選挙権の制限は立法府に一定の裁量が認められているとしたうえで「受刑者は一般社会から厳に隔離されるべき者で、遵法(じゅんぽう)精神の欠如も著しく、選挙権の行使の主体として適格性に疑問がある」と指摘。公選法の制限は正当性、合理性があるとした。
さらに制限が選挙人の資格の差別を禁じた憲法44条に違反するという主張に対し、受刑者の立場は一時的なもので「社会的身分」にはあたらないとした。
判決後、訴訟代理人の原田武彦弁護士らが会見し、制限の理由の有無から違憲とした大阪高裁判決に対し、広島地裁は制限に合理性があるか否かで判断したことを「後退」と評価。「選挙権のない受刑者は、公選法を変えようと思っても自分たちの力では変えられない。人権のとりでである裁判所はどこにいったのか」と訴えた。
原告の男性は07年から広島刑務所に収容されており、14年の衆院選で刑務所長に不在者投票を申し出たが認められず、大阪高裁判決を知り、15年9月に提訴していた。(久保田侑暉)

(参考:大阪高違憲判決)

受刑者の選挙権制限は「違憲」 大阪高公選法巡り初判断 - 日本経済新聞(2013年9月27日)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG27048_X20C13A9CR8000/
http://megalodon.jp/2016-0727-0929-21/www.nikkei.com/article/DGXNASDG27048_X20C13A9CR8000/

禁錮刑以上の受刑者に選挙権を認めない公職選挙法の規定は憲法違反だとして、大阪市西成区の元受刑者の男性(69)が、国に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、大阪高裁(小島浩裁判長)は27日、「受刑者の選挙権を一律に制限するやむを得ない事由はなく違憲だ」との判断を示した。
男性側の代理人弁護士によると、受刑者の選挙権の制限に対する違憲判断は初めて。
違憲確認の訴えは「既に懲役刑の執行を終えており不適法」として一審・大阪地裁と同様に却下。「国が規定を廃止しなかったことが違法とはいえない」などとして賠償請求も棄却した。
判決は「選挙違反の罪を犯した場合以外、選挙権を制限するにはやむを得ない事由が必要」と指摘。「受刑者が直ちに順法精神に欠け、公正な選挙権の行使が期待できないとはいえず、受刑者の資格や適性を根拠として選挙権を制限すべきではない」とした。
「一般的に刑事施設法は、受刑者が選挙公報政見放送などで情報収集することを制限していない。外部の情報取得に一定の制約を受けていることを選挙権制限の根拠にはできない」とした。
一方で、男性が投票できなかった2010年7月の参院選までに「受刑者の投票権の制限に関する問題が独立して国会で議論され、世論が活発になっていたとは認められない」と指摘。「国会が正当な理由なく長期にわたり規定の廃止を怠ったとは評価できない」とした。
判決によると、男性は道交法違反罪などで10年3〜11月、滋賀刑務所で服役。同年7月の参院選で投票できなかった。
在外邦人の選挙権を制限する公選法違憲性が争われた訴訟で、最高裁は05年9月、「選挙の公正を害した者は別として、国民の選挙権やその行使を制限することは原則として許されない」と判示。成年後見人が付くと選挙権を失うとした規定を巡る訴訟では、東京地裁が今年3月、規定を違憲で無効とする判決を言い渡した。