辺野古再提訴、ヘリパッド着工 翁長氏「強硬政府に抗議」 - 東京新聞(2016年7月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016072302000137.html
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政府は二十二日、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設に関し、翁長雄志(おながたけし)知事が埋め立て承認取り消しの是正指示に従わないのは違法だとして、翁長氏を相手取って地方自治法に基づく違法確認を求める訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。米軍専用施設「北部訓練場」の返還の条件になっているヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の工事も始めた。参院選後に再び始まった政府の強硬姿勢に、翁長氏は反発を強めている。
政府は司法決着を経て新基地建設作業の早期再開を目指す。日米同盟の強化を見据え、工事を着実に進めたい考えだ。翁長氏は県民の反対意見を踏まえ、徹底抗戦する方針。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十二日の記者会見で、提訴に関し「(訴訟と話し合いを並行して進める)和解条項に基づいて手続きが進んでいる証しだ」と強調した。翁長氏は内閣府で記者団に「強硬に進めるのは、あるべき民主主義国家の姿からはほど遠い」と批判した。
高裁支部は第一回口頭弁論を八月五日に開く。判決は今秋になる見通しで、いずれかが上告した場合、年末から来年初めにかけて最高裁判決が出るとみられる。菅氏は「(政府勝訴との)確定判決が出たら、できるだけ速やかに移設工事を再開したい」と述べた。
政府が急ぐのは、二〇一三年に米国と普天間飛行場の返還時期について「二二年度またはその後」と合意したため。来年一月には米新大統領が就任。移設が遅れれば、オバマ大統領と築いた同盟強化の流れが変わりかねないとの懸念がある。
一方、翁長氏はヘリパッドで新型輸送機オスプレイが運用される計画があるとして反対しており「強硬に工事に着手する政府の姿勢は到底容認できず、強く抗議する」と記者団に述べた。菅氏は記者会見で「基地負担軽減に資するようにしたい」と強調した。
◆400メートル先にオスプレイ
政府が「米軍北部訓練場」(東村、国頭(くにがみ)村)で建設工事に着手したヘリパッドを巡り、周辺住民が抗議活動を続けているのは、人口百五十人ほどの集落を取り囲むように建設されるからだ。
ヘリパッドは二カ所に建設され、さらに四カ所につくられる予定。東村高江の集落は六カ所のヘリパッドに取り囲まれるような形になる上、集落から最短で四百メートルほどしか離れていない場所もある。ヘリパッドを使うのは米軍の新型輸送機オスプレイなどで、住民には騒音被害に対する怒りと事故への不安が広がっている。
日米両政府は一九九六年に同訓練場の約半分に相当する四千ヘクタールの返還に合意。返還敷地にあるヘリパッド六カ所を残る敷地に移設することを条件とした。ヘリパッドは現在、訓練場全体に二十二カ所あるが、返還後は半分になる敷地に二十一カ所が集中する。
六カ所のうち二カ所は二〇一四年までに運用が始まった。東村役場によると、オスプレイが村の上空数十メートルの低空で飛び、先月は夜中の十時すぎまで騒音が響いた。小中学校もあるが、担当者は「子どもが夜眠れず、学校に行けないなどの訴えが寄せられている」と話す。残り四カ所が完成すれば、オスプレイの飛行は増える。住宅地のすぐそばを飛び交う状況は、同県宜野湾市の米軍普天間飛行場と変わらない。
地元住民らは二十二日、座り込みなどで着工に反対したが、政府は県外から五百人もの機動隊員も動員し排除し、強制的に工事を始めた。政府は「負担軽減のため」と強調するが、住民の意向を無視して工事を強行するという辺野古の新基地建設と同じ構図が透けて見える。 (金杉貴雄)