飛び降り強要 加害小4の親に1000万円命令 - 東京新聞(2016年7月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016072002000136.html
http://megalodon.jp/2016-0720-1016-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016072002000136.html

二〇一三年、東京都江東区の小学校に通っていた当時二年の女子児童が上級生の少女から脅されて九階建てマンションの屋上から飛び降り重傷を負ったとして、被害女児と保護者が少女の両親に三千万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は十九日、監督義務を怠ったとして約千二十五万円の支払いを命じた。
判決理由で小野瀬厚裁判長は、少女が事件後に発達障害の一種であるアスペルガー症候群との診断を受けたことを挙げ「他者が思い通りに動かないと怒りを強く抱く傾向があった。両親はこうした傾向を踏まえて専門家に相談するなどの対応が不十分だった」と指摘した。
判決によると、一三年一月、当時四年だった少女は校門前で縄跳びを振り回していた女児を注意。面識はなかったが、さらに説教をしようとマンション屋上に誘い出した。女児は「飛び降りないと殺すぞ。ここから落ちて死んでしまえ」と言われて飛び降り、木や水槽にぶつかりながら約二十六メートル下に転落、足や胸の骨を折るなどの重傷を負った。
少女には聴覚障害があり、両親は「親子で聴覚障害専門のクリニックを訪れトレーニングを重ねるなど、養育に力を注いできた」として監督を怠っていないと主張した。
小野瀬裁判長は両親について「少女が問題行動を起こさないよう、相当の努力を払ってきた」と認める一方、両親が少女を叱る際に平手打ちをしたことがあったとして「体罰的な注意を伴っていたため、少女の傾向を発見するのが難しくなっていた」と主張を退けた。
少女については「当時十歳で、死ぬことの重大性が理解できていなかった」として責任能力はなかったと判断した。

◆厳しい判決
心理カウンセラーの内田良子さんの話 監督義務を怠ったと判断された両親は、クリニックで少女に聴覚障害のトレーニングをしていた。できる範囲のことはしていたと思われ、厳しい判決だと受け止めている。アスペルガー症候群など発達障害の子どもは、クラスの中に一定数いることがここ数年で分かってきた。専門家以外では知らない人も多い。今後も同種事案が起きる可能性もあり、両親の責任で終わらせるのではなく、学校など関係機関との連携がどうだったのかなど、多面的な検証が必要だ。