18歳投票率、19歳より11ポイント上 高校での「主権者教育」に効果 - 東京新聞(2016年7月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016071302000122.html
http://megalodon.jp/2016-0713-0903-39/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016071302000122.html

今回の参院選総務省の抽出調査(十一日発表)では、十九歳の投票率(39・66%)より十八歳の投票率(51・17%)が約11ポイントも高かった。高校で活発になった模擬選挙などで十八歳の関心が高まった一方、進学や就職で地元を離れた十九歳は不在者投票が利用しにくかったことなどが要因と指摘されている。
「生徒たちは、ほとんどが『投票に行った』と話していた」。高三の授業で安全保障政策や消費税についての討論を取り入れてきた東京都立高校の男性教諭は、手応えを語る。
同校では、数年前から実際の選挙に合わせて模擬選挙を続けるなど、主権者教育に力を入れてきた。教諭は「政治課題について自分なりの考えを持てるようになれば、自然とその意見を届けたくなるものではないか」とみる。
文部科学省は「十八歳選挙権」が導入されるのを受け、二〇一五年度から、選挙の仕組みを学べる副教材を高校生全員に配布した。
少なくとも十一府県の二十一の高校で期日前投票所が設置された。実際に利用した生徒からは「休日は模試で忙しい日もある。平日に学校で投票できたので助かる」との声も聞かれた。
一方、総務省の抽出調査で投票率が十八歳より10ポイント以上低かった十九歳の事情はどうか。「住民票を実家に残したままで、不在者投票の仕組みがよく分からなかった」。九州出身で川崎市に住む大学二年の男性(19)は、投票に行かなかった理由をこう語る。
不在者投票は選挙期間中に住所地で投票できない人が、滞在先の市区町村で投票する制度。利用するには、まず請求書を住所地の選管に送る必要がある。
住民票を移していたとしても、選挙人名簿に三カ月以上住民登録されていなければ、転居先で投票できない。今回の参院選では、大学進学で今春、地元を離れた学生が期日前投票所を訪れ初めて不在者投票を利用しなければいけないことを知るケースが相次いだ。
立教大の五十嵐暁郎(あきお)名誉教授(日本政治論)は「大学生らの投票率が低いことには制度的な問題もある」と指摘。ただ、「高校の主権者教育には一定の効果があったと言える。今後、若い有権者の意識を一層高めていけるよう内容を検討していくことにより、卒業後の投票行動にもつながっていくのではないか」と述べた。