「2/3」「改憲」どこまで意識? 江東区の期日前投票所で聞く - 東京新聞(2016年7月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016070802000136.html
http://megalodon.jp/2016-0708-1033-38/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016070802000136.html

参院選の投開票が十日に迫った。世論調査では自民、公明、おおさか維新などの議席改憲発議に必要な三分の二以上に達する可能性が強まっている。ここ数日、終盤情勢を伝える新聞各紙の見出しには「三分の二」という数字が躍るが、この数字や「改憲」というテーマを、有権者は一票を投じる際にどれぐらい意識しているのだろう。二〇一三年の前回に比べ、期日前投票者数の伸び率が東京二十三区でトップの江東区期日前投票所で、投票を終えた人たちに話を聞いた。 (上田千秋)
「三分の二の意味はもちろん分かってる。争点はいろいろあると思うけど、最も大事なのは憲法」。七日、同区常盤に設けられた期日前投票所の前で、四十代の女性が話した。
下町の趣と、湾岸エリアに立ち並ぶ高層マンションなど新しい風景が混在する同区。平日にもかかわらず、性別、年齢を問わず多くの人が投票所を訪れる。期日前に一票を投じようとするだけに、政治への思いも強い人が多いようだ。
今回の選挙戦では民進、共産など野党側が改憲阻止を訴える一方、自民党は議論を避けている。投票に来た会社員男性(44)は改憲に賛成としながら、「安倍晋三首相自身が『三分の二』を隠してるよね」と、首相が街頭演説などで憲法を論じない姿勢を批判する。
「このまま『選挙に勝ちました、三分の二取ったので憲法変えます』では、反対派は納得できないだろうし、賛成派もすんなりとは受け入れられない」と男性。「本当に改憲したいなら、きちんと説明をして正々堂々とやるべきだろう」
ただ、そうした有権者ばかりでもない。別の会社員男性(33)は「三分の二? 聞いたことないです」。記者が説明しても「全く知らなかった。改憲に賛成とか反対とかも考えたことない」と答え、足早に立ち去った。
自営業の女性(80)は「言われてみれば聞いたことがあるような気もするけど…」と自信なさげ。「戦争は二度とやっちゃいけないと思うけど、今の生活が良い方に変わるなら改憲には反対しない」と話した。
暮らしを支えてきた憲法を変えることは、一人ひとりの生き方にもかかわってくる問題だ。パートの女性(70)は「欧州連合(EU)離脱派が勝った英国の国民投票のように、後から騒いでも遅い。今、一番に考えなければいけないことは何なのか、私たち自身が見極めて投票にいかないと」と強調した。

◆3分の2の意味とは 国会 改憲発議可能に
改憲手続きを規定した憲法96条では、衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票過半数の賛成が必要としている。連立与党の自民、公明両党に加え、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党は、安倍政権下での改憲に前向きな「改憲4党」と位置付けられる。
衆議院(定数475)は現在、自公だけで325議席と既に3分の2以上を占めている。参議院(定数242)は、改憲4党の非改選が84議席。今回の参院選で4党が78議席以上獲得すると、定数の3分の2の162議席に達する。さらに非改選には改憲に前向きな諸派・無所属議員もいる。
高知新聞が今月2〜4日、高知市内の街頭で有権者100人に「3分の2」の意味について尋ねたところ、83%の人が知らなかった。

<東京都の期日前投票者数> 5日時点の投票者数は全有権者の6・54%に当たる73万4202人で前回同時期の58万8077人と比べ1・25倍に増えた。都選管は「公示期間が通常より1日長いことと、18歳選挙権などの報道で認知度が高まったのでは」と分析。江東区は湾岸エリアの開発などで人口増が著しく伸び率は23区で最大の1・40倍。