<被災地と憲法>(上)生存権 人権奪われた末の関連死 - 東京新聞(2016年6月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/senkyo/kokusei201607/zen/CK2016062902000184.html
http://megalodon.jp/2016-0701-1116-13/www.tokyo-np.co.jp/article/senkyo/kokusei201607/zen/CK2016062902000184.html

参院選改憲勢力が三分の二以上の議席を確保すれば、改憲が現実味を帯びる。その第一歩になるかもしれないのが、大災害などの緊急時に国家が権力を集中させる緊急事態条項の創設だ。憲法が保障する権利も一時的に制限される。緊急事態条項を巡る議論を入り口に、憲法の理念も見つめ直した。
岩手県で被災者を支える滝上明弁護士(44)は「震災関連死は、まともな人間の生活じゃないところをくぐり、力尽きて亡くなっている。憲法生存権が守られていない」と話す。弁護士の間でも災害が人権問題だと強く意識されるようになったのは東日本大震災以降という。
災害で苦しむ人々を救うのは国のさらなる関与なのか、それとも憲法の理念を生かす道半ばの模索を続けることなのか。関連死で亡くなった三千四百三十七人(東北三県)という数字は、私たちに問い掛ける。 (小林由比、中山高志)
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憲法25条1項> すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

◆国の緊急時権限集中 改憲草案に
<緊急事態条項> 戦争や内乱、自然災害などで、平時の統治機構では対処できない非常事態における政府や国会などの権限の規定。通説では、国家権力が国家の存立を維持するために立憲的な憲法秩序(人権の保障、権力分立)を一時停止して非常措置を取る権限と定義されている。自民党改憲草案は98、99条で「何人も、国民の生命、身体および財産を守るための国や公の機関の指示に従わなければならない」「衆議院は解散されず、両議院の議員の任期および選挙期日の特例を設けることができる」などと定めている。