(余録)議案に賛成の者は「もっとも、もっとも」… - 毎日新聞(2016年6月22日)

http://mainichi.jp/articles/20160622/ddm/001/070/160000c
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議案に賛成の者は「もっとも、もっとも」、反対の者は「この条、いわれなし」と声を上げ、その声の大きさで事を決めたという。いや平安時代の話で、場所は比叡山、寺の大事に臨んでの僧徒数千人の集会での多数決のとり方だった。
こんな話をするのも、日本で多数決や選挙で物事を決める慣行を最初に定着させたのが各地の大寺院だったからだ(利光三津夫(りこうみつお)ほか著「満場一致と多数決」)。僧徒数が少ない時は、紙に記された賛否の表題や候補者名の上に点などの印をつける形で投票が行われた。
点などによる投票を書き入れていく紙は「合点状」と呼ばれた。そう、今は承知するという意味となった「合点(がってん)」である。「がってん承知」は日本の民主的意思決定の原点だったらしい。今や日本中で書き入れられる「点」を合わせて決められるこの国の未来である。
来月10日の投開票にむけて第24回参院選が始まる。すでに安倍晋三(あべしんぞう)首相が「新しい判断」を理由に消費増税再延期を表明したことで火ぶたを切った選挙戦である。増税延期の「信」を問うという選挙は前にもあったが、その後を知る有権者の反応は当時と同じだろうか。
野党は、民進、共産、社民、生活が1人区で候補を統一する共闘態勢を組んだ。こちらは改憲派憲法改正の発議に必要な議席の3分の2を占めるのを阻止するのだとして憲法問題の争点化を図る。候補者選びの基準となる争点も自分で見定めるのが今の選挙である。
18、19歳の有権者を迎える初の国政選挙だ。釈然とせぬ点、だまされていまいかと思う点は合点のいくまで問いただした上で投じたい1点、いや1票である。