(いま読む日本国憲法)(15)学問への侵害許さない - 東京新聞(2016年6月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016061202000180.html
http://megalodon.jp/2016-0614-0904-56/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016061202000180.html


この条文が保障する学問の自由は、学問研究の自由のほか、研究した成果を発表する自由なども含まれると考えられています。このため思想及び良心の自由を定めた一九条や、表現の自由を保障した二一条に、学問の自由を含めてもよかったように感じますが、あえて独立した条文にしたのは、学問の自由の定めがなかった旧憲法下で、学問への侵害があったためです。
有名な例が「天皇機関説」事件。美濃部達吉という憲法学者が「天皇は、国家という法人の意思を最終決定する機関」という学説を唱えて猛反発を受け、著書が発禁処分となった上に銃撃にまで遭ったのです。
学問は、本質的に物事の道理を根本から問い直す性格を持ち、権力者にとって都合のいい研究ばかりにはなりません。だからこそ、学問の自由をわざわざ憲法で保障したわけです。
また、この条文は、大学の自治も保障していると解釈されています。
自民党改憲草案も、ほぼ現行条文通り学問の自由を認めています。一方で今の政府は、学問の自由への侵害と批判されることが少なくありません。
安倍晋三首相や閣僚が、全国の国立大学に対して卒業式・入学式での国旗掲揚や国歌斉唱を求めてきたことが代表例。昨年施行された改正学校教育法も、国立大学の自治で重要な役割を担ってきた教授会の影響力を弱め、産業界の望む研究を増やす狙いがあるのではないかという批判が上がっています。

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「読むための日本国憲法 東京新聞政治部編」(文春文庫)をベースに、憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。
自民党改憲草案の関連表記
学問の自由は、保障する。