<参院選>有権者への道(中) 選挙権…とにかく欲しかった:神奈川 - 東京新聞(2016年6月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201606/CK2016061002000175.html
http://megalodon.jp/2016-0610-1521-46/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201606/CK2016061002000175.html

「いよいよ来たか」。早稲田大一年の吉水隆太郎さん(19)=藤沢市=は付属高一、二年の時、選挙権年齢の引き下げを求める運動に参加していた。「十八歳選挙権」が実現し、待ちに待った投票日に向けて準備を進めている。
高校時代、政治に関心があったわけではなかったが、選挙権獲得のために活動する他校生徒がいると聞き「内情を見よう」と思った。国会議員に会って政治の印象が変わった。「いつも批判されている議員も、国のために頑張っている」。卒業時、「主権者意識を高める教育」をテーマに論文を提出した。
選挙権は「弟が兄の物を欲しがるようなイメージ。とにかく欲しいって感じだった」が、実際に権利を得ると緊張感が高まった。「最初の投票率が低いと、それが前提になってしまう。気軽に投票に行けばいいっていう問題じゃない」
調べればそれだけ、迷うことも増える。政党で判断するか、候補者個人を見るか。目の前の生活か、国全体の視点か。自分が何を重視するか、できる限り考え抜いて票を投じたい。「選挙は国政に意見を反映させる大事な場だから」

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中央大一年の原田花織さん(18)=海老名市=は、投票を呼び掛ける学内団体「Vote at Chuo!!」に入り、地方出身学生に不在者投票の利用を促したり、付属高の生徒に主権者教育を実施したりしている。
「高校生の時、親の投票についていって、自分が投票できなくて悔しかった」。大学入学前から、この団体に入ると決めていた。「政治の話が気軽にできるから」。同級生の岡井泉樹(みずき)さん(18)=東京都稲城市=と「十八歳選挙権」の意義を語り合う。原田さんは「若者が選挙に関わることで、偏った政治が変わると思う」。高齢者向け政策が手厚いと思える現状を、この手で変えられると信じる。
選挙権を得て「ついに来た」と胸を躍らせる。今後、立候補者の公約を調べるつもりだ。同時に、イベント開催や街頭での呼び掛けといった団体の活動を通じて投票率を上げ、十代の考えを最大限、国政に伝えようと取り組む。
団体の外では「選挙の話をすると、しらける雰囲気がある」。課題解決より「当選」しか考えない政治家が多数なら、投票しても社会は変わらないのではという疑念もある。それでも、「投票しなければ自分の意思は伝わらない。まずは投票に行くきっかけづくりが大事。最初が肝心だから」と気を引き締める。 (志村彰太)

<若者の低投票率と向上への取り組み> 総務省のまとめによると、2013年参院選投票率は20〜24歳が31・18%、25〜29歳が35・41%で、全年齢平均の52・61%より低かった。この傾向は横浜市内でも変わらず、若者の投票率向上が課題。県内の新有権者の18、19歳は約16万8000人で、全有権者の2%ほど。「18、19歳は20代よりも投票率が低くなるとの声もある」(明るい選挙推進協会)との懸念から、県内では慶応大(港北区)や、神奈川工科大(厚木市)、小田急小田原線東海大学前駅秦野市)などに期日前投票所が設けられる予定。