(いま読む日本国憲法)(14)経済弱者守る制約も - 東京新聞(2016年6月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016060802000213.html
http://megalodon.jp/2016-0608-0957-17/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016060802000213.html


どこに住んでもいいし、どんな職業に就いてもいいという自由を保障した条文です。現代では当たり前の権利として定着していますが、昔の封建社会では、江戸時代の「士農工商」に代表されるように、人は生まれた土地や身分、先祖代々の職業に縛られることが多かったのです。
職業選択の自由には、自分が望む仕事を実際に行う「営業の自由」も含まれると考えられています。
また、この二二条と、二九条が定める財産権は、国民が自由に経済活動を行える権利という意味で「経済的自由権」と総称されます。
ポイントは、この条文の一項で「公共の福祉に反しない限り」という条件をつけている点です。現行憲法で、国民の権利や自由を制限する規定は決して多くありません。
職業選択の自由の制限は、銃や麻薬の密売といった反社会的な職業の禁止、医学的知識や技術を持たない人を医者にさせないための医師免許制度などが該当するでしょう。
昔ながらの商店街を守るための大型店の出店規制など、競争社会の中で経済的弱者を守るための規制も、この条文が根拠とされます。
つまり、福祉国家として、国民が安心した暮らしを営むために必要最小限の制約を認めているのです。
自民党改憲草案は、この「公共の福祉に反しない限り」という条件を削除しています。「弱者の切り捨てにつながるのではないか」との懸念が指摘されています。
条文の二項が認める「外国に移住する自由」には、短期の海外旅行も含まれます。日本国籍を離脱する自由も定められています。

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憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。

自民党改憲草案の関連表記
何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。