(いま読む日本国憲法)(13)権力批判の自由を保障 - 東京新聞(2016年6月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016060502000177.html
http://megalodon.jp/2016-0608-0953-32/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016060502000177.html


日本国憲法が保障する多くの人権の中で特に根源的で、民主主義社会に不可欠な権利が、この条文で定める表現の自由です。
権力批判につながり得る表現の自由は、国家権力にとって目障りなものです。旧憲法言論の自由を「法律ノ範囲内」という条件つきで認めていました。この結果、治安維持法などに基づいて反政府的な言論や反戦運動が取り締まられることになったのです。
このため現行憲法は、国家権力からの自由を強く意識し、表現の自由を無条件に認めました。新しい人権の一つ「知る権利」も、表現の自由に含まれるという解釈があります。
最近、国が表現の自由を軽視するかのような出来事が相次いでいます。
例えば二〇一四年十二月施行の特定秘密保護法。政府が指定した「特定秘密」を漏らした公務員や、その情報に迫った市民らを処罰できる法律で、「知る権利」を脅かす懸念があります。今年二月には、高市早苗総務相が、政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性に言及しました。
四月にこうした現状を調査した国連の特別報告者は報道の独立性が重大な脅威に直面しているなどと警告しています。
自民党改憲草案は「知る権利」を追加する半面、表現の自由に関し「公益及び公の秩序を害すること」を目的とした活動や結社は認めないとする規定を新設しました。草案のQ&Aは「内心の自由を社会的に表現する段階になれば、一定の制限を受けるのは当然」と説明しています。
何が「公益及び公の秩序を害すること」にあたるのかは曖昧です。反戦脱原発を訴えるデモが、規制の対象にされないとも限りません。国民を萎縮させ、権力を批判する表現が抑えられるようでは、健全な国とは言えません。

 ◇ 
憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。

自民党改憲草案の関連表記
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。

《用語解説》
知る権利=国民が、国政に関わる公的な情報を知る権利