教師の接し方、子に大きな影響 高崎で進路指導推進協・山口会長が講演:群馬 - 東京新聞(2016年6月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201606/CK2016060802000180.html
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高崎市立佐野中学校のPTAのセミナーで教育研究団体「日本進路指導推進協議会」の会長を務める藤岡市の山口和士さんが「子供を成長させる10の条件」と題し講演。自身の体験から子どもに真摯(しんし)に接することの大切さを訴えた。
山口さんは、三月まで県立高崎東高校の校長を務めた。進路指導へのめざましい実績から全国的に注目されている。校長時の一昨年から開く「進路多様躍進校会議」には昨年、二十五都道府県の七十校から百三十人の教師が参加している。
講演では生まれ育った山形県での体験を振り返った。「小学一年時の担任から白墨と教わったままに、チョークという二年時の担任に『白墨では』と言うと、『これはチョークだ』と投げつけられ怒鳴られた。ショックで声を失った」
高校二年の時、ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士に、「先生、私は沈黙の中で苦しんでる」と手紙を送ると、「会いにきなさい」と返事がきた。
京都大学で面会すると、湯川博士は石を見せ「これは何」と聞いた。山口さんは十数分かけ「い、し」と発した。今度はその石を手に握らせ開かせ、「これは何」と再度問われた。また、十数分かけ「い、し」と発した、湯川博士は「これはどこにでもある石ころでなく君のぬくもりを持った石だ」と語り掛けた。
これに感激した山口さんは声を取り戻し、遅れていた勉強をやり直し大学進学を目指した。山口さんは「一人の教師により声を失い一人の教師により声を取り戻した」と教師の接し方が子どもに大きな影響を与えることを強調した。
また、自身の教師としての経験から子どもの悩みの三分の一は家庭の問題だと指摘。入学式で暗い表情の生徒と両親がいたので両親に事情を聴くと「今日で離婚するから二人で来た」。そこで生徒を呼び「大変だったな。今日は肩を貸してやる」と言うとその生徒は一時間、山口さんの肩にすがり泣いたと明かした。心に迫るエピソードは聴講した母親らの涙を誘っていた。 (樋口聡