沖縄県議選 「県内移設」拒む民意だ - 東京新聞(2016年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060702000124.html
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沖縄県議選で、翁長雄志知事を支える県政与党が議席を増やし、過半数を維持した。米軍普天間飛行場の「県内移設」を拒む民意の表れである。日米両政府は「基地ある故」の弊害を直視すべきだ。
四十八議席をめぐって争われた沖縄県議選。普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への「県内移設」に反対する翁長知事を支える勢力は二十七議席となり、改選前から四議席増えた。
二〇一四年十二月に就任した翁長知事にとって県議選結果は「中間評価」でもある。知事派勝利は日米両政府に「県内移設」反対と、米兵らに特権的な法的地位を認めた日米地位協定の改定を訴え続ける知事を信任し、その政治姿勢を後押しするものだろう。
一三年暮れに仲井真弘多前知事が「県内移設」容認に転じて以降行われた名護市長選、県知事選、衆院選ではいずれも「県内移設」反対派が勝利した。今回の県議選は、この民意の潮流に変わりがないことを示したことにもなる。
沖縄県には基地や訓練場など在日米軍専用施設の約74%が集中。訓練に伴う騒音や事故、米兵らによる犯罪や事故が後を絶たない。
先月には、元米海兵隊員で米軍嘉手納基地に勤める軍属の男が女性遺棄容疑で逮捕された。
在沖縄米軍は一カ月の服喪期間を設け、基地と自宅外での飲酒や未明の外出を禁止したが、県議選前日の四日には米海軍二等兵曹の女が衝突事故を起こし、酒酔い運転の現行犯で逮捕された。
米軍による綱紀粛正と再発防止策は「役に立っていない」(翁長氏)ことが証明されたのではないか。日米両政府は沖縄で相次ぐ米兵らの犯罪や事故が県議選にも影響したと重く受け止めるべきだ。
安倍晋三首相は先の日米首脳会談で、オバマ大統領に直接「強い憤り」を伝え、酒酔い運転についても、きのう「誠に遺憾であり言語道断だ」として、米側に抗議したことを明らかにした。
しかし「基地ある故」の犯罪や事故を減らすには、米軍基地を大幅に縮小し、米兵らに特権意識を生んでいると指摘される地位協定を改定する必要がある。
首相は日本国民たる沖縄県民の民意を真摯(しんし)に受け止め、「唯一の解決策」とする「県内移設」から「国外・県外移設」への方針転換と地位協定の改定を米側に提起すべきだ。米側に抗議し、綱紀粛正と再発防止を求めるだけでは「国民の生命と財産を守る」首相の責任を果たしたことにはなるまい。