自殺対策白書 若い命をみんなで守る - 東京新聞(2016年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060702000123.html
http://megalodon.jp/2016-0607-0948-00/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060702000123.html

政府の自殺対策白書によると、二〇一五年の自殺者数は二万四千人余と六年連続で減少した。とはいえ、自殺死亡率は欧米主要国と比べ、依然として高い水準だ。自殺予防対策をさらに進めたい。
日本の自殺者数は、一九九〇年代後半から十数年連続で三万人を超える緊急事態が続いていたが、一五年はピーク時よりも一万人以上少なくなっている。
経済状況がやや持ち直したことに加え、貸金業法改正により多重債務問題が改善されたことも減少に寄与したとみられる。
とはいうものの、交通事故死者数の約六倍、一日平均六十六人が自殺で亡くなっている計算だ。
白書が特に「深刻な状況」と指摘するのは、若い世代の自殺だ。人口十万人当たりの自殺者数である自殺死亡率は、四十歳代以上では低下傾向にあるが、若い世代ではおおむね横ばいとなっている。十五〜三十九歳の各年代の死因は「自殺」がトップ。同年代で死因のトップが自殺なのは、先進七カ国の中で日本だけで、残り六カ国の一位はすべて「事故」だ。
自殺者の年齢構成比でみると、十九歳以下の割合は2・3%と、この八年間で0・7ポイント増加している。十九歳以下の自殺率は、他の年代と比べれば低いものの、八〇年代や九〇年代に比べ、若干上がっている。若い世代への自殺対策は喫緊の課題だ。
昨年、子どもの自殺が最も多い「九月一日」を前に、「学校がつらいなら、図書館においで」と呼び掛ける神奈川県の図書館司書のツイートが、多くの共感を呼んだのは記憶に新しい。
四月に施行された改正自殺対策基本法には、学校に自殺予防教育に取り組む努力義務を課した。
子どもには、強いストレスに直面した場合の対処法を知ってもらいたい。困った時に相談できる大人のいることも。厚生労働省は「子どもが周囲に悩みを打ち明けやすい環境を大人がつくることが重要」と指摘するが、どこまで実行できているか。
子どもの電話相談は、文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」やNPO法人「チャイルドライン支援センター」などが受け付けている。多くの児童、生徒に知ってもらいたい。
北海道では、教職員を対象に、子どものSOSサインや自殺予防に関する指導資料を配布し、研修を実施している。
命を守る取り組みを、全国的に広めたい。