ハンセン病「栗生楽泉園」の歴史語り継ごう 前橋・群大でシンポ:群馬 - 東京新聞(2016年6月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201606/CK2016060502000146.html
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ハンセン病の元患者らに対する差別や偏見を考えるシンポジウムが、前橋市の群馬大荒牧キャンパスで開かれた。草津町国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」の歴史を語り継ごうと、同大の学生らが制作したガイドブックと映画が披露された。 (原田晋也)
ガイドブックと映画は、同大社会情報学部行政法ゼミの学生ら十五人が制作。昨年七月から同園を何度も訪問し、元患者らに取材して作り上げた。
ガイドブックは、ハンセン病の歴史や園内の地図、差別のため引き取り手のない遺骨が納められた納骨堂などを紹介。中高生にも理解しやすいように難解な表現を避け、写真やグラフを多く使った。四千部を刷り、県内の中学や高校、教育関係者に配るという。
ガイドブック制作班のリーダーで四年の大谷颯さんは「学べば学ぶほど、ハンセン病問題の深さや自分たちの無知に打ちひしがれたか知れない。風化させてはいけないという気持ちをあらためて強くした」と語った。
映画は「いのちの証(あかし)を求めて」と題した三十分間のドキュメンタリーで、会場で上映された。各地の原告団で結成したハンセン病国家賠償訴訟の全国原告団協議会の会長を務め、二〇一四年に栗生楽泉園で亡くなった谺(こだま)雄二さんの生涯が題材。活動家でもあり詩人でもあった谺さんの人物像を、関係者のインタビューなどでまとめた。
映画制作班のリーダー、四年の堤雅貴さんは「映画を制作したことで、ハンセン病とそこに生きた人々を語り継いでいく責任を担ったと思う。この映画がほんのわずかでも力になれば、これほどうれしいことはない」と、制作に込めた思いを涙声で発表した。
栗生楽泉園の入所者自治会長、藤田三四郎さん(90)の講演もあり、患者を強制的に隔離してきたらい病予防法廃止を目指して元患者らが闘ってきた経緯を説明した。講演後、シンポジウムを企画した学生らに「正しい理解を語り継いでほしい。私も命ある限り伝えていきたい」と語った。
同大と栗生楽泉園、同園入所者自治会は今年二月、元患者らの証言を語り継ぐ事業などを推進する包括的事業連携協定を締結した。シンポは協定の意義を確認し、今後の取り組みのあり方を考えようと同大が主催し、学生ら約百七十人が詰め掛けた。