(筆洗)消費税率は来年上がらない - 東京新聞(2016年5月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016053002000131.html
http://megalodon.jp/2016-0531-1044-29/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016053002000131.html

ある夫婦。夫がある日、自宅の改築計画を持ってきた。今の平屋を三階建てに改築したいという。二、三階をアパートにして家賃収入で将来に備えたい。どうしてもやると意気込んでいる。
余裕がないから、またにしましょうよと妻がなだめると、こんなアイデアを出してきた。ひとまず二階部分を増築する。そのうち景気も良くなって、給料も増えるので、来年四月、三階部分を建設する。
了承したが、二階の増築だけでも家計は苦しい。その上、景気は期待に反して上向かない。このまま三階の建設となれば、わが家は破産する危険もある。妻の涙に仕方がない、三階は当分あきらめるか。そう夫が宣言したとき、あなたが妻ならなんとおっしゃるか。
「その判断は正しいわ。三階の建設を先送りしてくれてありがとう。これでラクになるわね」か。それは相当にお優しい。大概は「あんたの計画がそもそもおかしいのよ」ではないか。皿の一、二枚投げるかもしれない。
安倍首相が二十八日夜、来年四月に予定していた消費税10%への引き上げ時期を二〇一九年十月まで二年半延期する方針を麻生太郎副総理兼財務相らに伝えた。二度目の延期である。
さて心に浮かぶせりふはどれか。「消費税率は来年上がらない。ありがとう」「見事な英断である」か。それとも、「そもそもあなたの経済政策と見通しがおかしいのよ」か。