新潟水俣病 感覚障害だけで認定命令 7人の訴え認める - 東京新聞(2016年5月31日)


2016年5月31日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016053102000121.html
http://megalodon.jp/2016-0531-0924-35/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016053102000121.html

新潟水俣病の認定申請を棄却された未認定患者ら九人が認定を求めた行政訴訟の判決で新潟地裁は三十日、「感覚障害だけでも認定はできる」として七人を公害健康被害補償法(公健法)に基づく水俣病と認定するよう新潟市に命じた。
水俣病認定を巡る判決は国の認定基準よりも救済範囲を広げた二〇一三年の最高裁判決以降、初めて。最高裁の判断基準を踏襲した今回の判決で、未認定患者の認定申請や同様の訴訟が増える可能性がある。
敗訴した原告二人は控訴する。原告側弁護団新潟県内に住む男女三人が新たに認定を求めて提訴すると明らかにした。
判決で西森政一裁判長は「軽い水俣病では症状が感覚障害だけのものがある」と認定。最高裁判決と同様に感覚障害を含む複数の症状の組み合わせを原則とする国の認定基準を事実上否定し、司法独自の基準で水俣病かどうかを判断した。
その上で「七人は魚介類を摂取するか、摂取していた母親の胎内にいたことで高濃度のメチル水銀を体内に取り込んだのが明らかで、感覚障害に他の原因が考えられない」と指摘。認定患者の同居親族がおり、食生活が同じという点からもメチル水銀を摂取した可能性が大きいとして水俣病と判断した。
また、メチル水銀が取り込まれてから数年後に発症した例や、発症後十〜二十年後に症状が悪化した例があるとして、長期間経過後、老化に伴い症状がはっきり現れる「遅発性水俣病」があり得ることも認めた。
訴えを退けた二人については「汚染された阿賀野川の魚を多食した確かな証拠がない」とした。二人は認定患者の同居親族がいない。
原告は新潟市の五十〜八十代の男女で、一人は申請後に死亡した未認定患者の遺族。阿賀野川メチル水銀に汚染された魚を食べ、手足のしびれなどの症状があるとして〇五〜一一年、市に認定申請し、〇七〜一三年に棄却された。
新潟市の篠田昭市長は判決について「真摯(しんし)に受け止めるとともに、判決内容の詳細を確認し、今後の対応を検討していく」と文書でコメントを出した。
水俣病の認定> 熊本、鹿児島両県で被害が出た水俣病新潟県で被害が出た新潟水俣病とも公害健康被害補償法に基づき患者が認定されている。4月末現在、3県で延べ2万9358人が申請し、認定は2985人。大半は基準が厳しくなった1977年以前に認定された。新潟水俣病の認定患者には昭和電工から最大1500万円の慰謝料などが支給される。審査は法定受託事務として3県と新潟市が実施。申請者は診断書を提出、聞き取りや公的検診を受け、有識者による審査会を経て知事や市長が処分を決める。