米海兵隊県民蔑視の研修資料 「沖縄、基地を政治利用」「軍用地料唯一の収入」 - 東京新聞(2016年5月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016052902000129.html
http://megalodon.jp/2016-0529-1012-38/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016052902000129.html

在沖縄米海兵隊が沖縄に着任した兵士らを対象に実施した沖縄の歴史や政治状況を説明する研修で、沖縄の政治環境について「沖縄県と基地周辺の地域は沖縄の歴史や基地の過重負担、社会問題を巧妙に利用し、中央政府と駆け引きしている」と記述し、沖縄側が基地問題を最大限に政治利用していると説明していることが分かった。
米軍に批判的な沖縄の世論については「多くの人は自分で情報を入手しようとせず、地元メディアの恣意(しい)的な報道によって色眼鏡で物事を見ている」と記述するなど、県民を見下すような記述もあった。
英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した。資料には「二〇一六年二月十一日」と日付が記載されており、最近の研修でも使われたとみられる。
ミッチェル氏は取材に対し「米軍が兵士に対して県民を見下すよう教えている。それが海兵隊員の振る舞いに影響を与えていることが分かる。『沖縄への認識を深める』という海兵隊の約束は失敗している」とコメントした。
資料は沖縄の状況について「多くの県民にとって軍用地料が唯一の収入源であり、彼らは基地を返還してほしくない」などと、明らかな事実誤認の記述もあった。
県によると、沖縄県民の総所得に占める基地関連収入の割合は、本土復帰直後の一九七二年には15・5%だったが、二十年以上前からは約5%で推移している。県は「比重は大幅に低下しており、基地返還が進めばさらに低下していくと考える」としている。
日本政府と県の関係について資料は「中央政府は兵士と基地に残ってほしいと望んでいる。なぜなら彼らは本土に代替地を用意できないからだ」と説明。沖縄に基地が集中する背景に、本土側が基地を受け入れない政治的都合があるとの認識も示している。
また、米軍関係者による繁華街や遊興施設での事件・事故については「突如現れる『ガイジンパワー』で、社会の許容範囲を超えた行動をしてしまう」と要因を分析。米軍関係者が日本でもてはやされる「カリスマ(特別な魅力)」があるとの認識を示す記述もあった。

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在沖縄米軍トップのローレンス・ニコルソン沖縄地域調整官は二十八日、記者会見し、資料に「沖縄県基地問題中央政府との関係のてこにしている」といった表現が用いられていたことに「中身については適切、妥当か精査を続ける。沖縄社会との開かれた議論は歓迎するし、不公平な内容があれば議論したい」と述べ、研修自体は若い兵士に「沖縄の地域社会や文化を伝える」目的があるとした。
沖縄県が米側に資料提供求める
在沖縄米軍海兵隊が隊員に実施している研修資料で、基地負担の軽減を訴える沖縄県民を侮蔑(ぶべつ)する表現を多用していた問題で、同県は沖縄防衛局を通してこの資料の提供を求めた。県は三月に那覇市で発生した米兵女性暴行事件を受け、米側に隊員研修の視察を求めており、六月の実施で調整していた。研修内容や資料に問題があれば見直しを求める方針だ。
同県幹部は「仮に兵士に沖縄を見下す価値観を植え付ける内容であれば、事件事故が根絶できない原因は隊員個人の資質ではなく、組織的体質ではないか」との見方を示した。
◆「沖縄2紙視野偏狭」市町村の基地への態度も分析
在沖縄米海兵隊沖縄県に着任した兵士らを対象に研修で使用した資料では、地元メディアについて「県内の二紙は内向きで視野が狭く、反米軍基地のプロパガンダを売り込んでいる」「基地の過重負担を訴えるために根拠のない情報を取り上げたり、誇張したりする」などと批判。偏向した報道が県民世論に影響を与えていることを強調する記述が目立っている。
地元メディアについて「意見を表明しない沖縄住民の多数の声ではなく、基地に反対する少数の意見を声高に叫んでいる」と批判した。「視野が偏狭」とする地元メディアに比べて「本土のメディアは偏狭的でない」と評価した。
基地跡地などの汚染物質について「(返還時には)日米地位協定ではそのまま返すことになっている」と言及。その上で「米軍は独自の環境基準を設けており、時には日本の基準値を上回ることがある」とした。
米軍基地に対する各市町村の政治態度について、名護市や北中城村(きたなかぐすくそん)、読谷村(よみたんそん)などを「反対、過敏」とし、金武町(きんちょう)や嘉手納町(かでなちょう)を「穏健」、伊江島伊江村)、東村(ひがしそん)、うるま市浦添市などを「過敏ではない」と分析した。
沖縄の歴史については、沖縄戦で県民の三分の一が犠牲になったこと、戦後の土地闘争が復帰運動につながったことなどを解説している。
◆蔑視の思想ずっと
沖縄県翁長雄志(おながたけし)知事の話> 上から目線の最たるもので、沖縄をどう扱っていくかなど考えているものが教育の中に言葉として出てきている。(沖縄蔑視の思想が)ずっと続いているんだなというのが正直な気持ちだ。