(筆洗)「ガリガリ君」を二十五年ぶりに値上げすることを伝える赤城乳業のCM - 東京新聞(2016年5月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016052702000138.html
http://megalodon.jp/2016-0527-2242-45/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016052702000138.html

ニューヨーク・タイムズ紙が一面で「日本で今年最も話題を呼んだCMの一つ」と報じた傑作広告がある。大人気のアイス「ガリガリ君」を二十五年ぶりに値上げすることを伝える赤城乳業のCMだ。
経営陣と社員が深々と頭を下げ、こんな歌が流れる。

値上げはぜんぜんかんがえぬ
年内値上げはかんがえぬ
とうぶん値上げはありえない…。

フォーク歌手の故・高田渡さんが、詩人の有馬敲(たかし)さん(84)の風刺詩「変化」に曲をつけた歌だ。

…なるべく値上げはさけたい
値上げせざるをえないという声もあるが
値上げするかどうか検討中である…

と詩は続き、最後は

値上げにふみきろう

と結ばれる。

いま注目されるのは、消費税の増税をめぐる安倍首相の変化である。かつては「(増税を)再び延期することはないと断言する」と語っていたのが、今年一月には「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」となり、きのうはサミットで「(リーマン・ショックを防げなかった)轍(てつ)は踏みたくない」となった。
首相は今、心の中でこんな替え歌を歌っているのかもしれない。

増税見送りはぜんぜんかんがえぬ
なるべく見送りはさけたい
見送らざるをえないという声もあるが
見送るかどうか検討中…

さて、首相は最後の一節をいつ、どんな表情で歌うだろうか。