声上げ立ち上がる時だ - 沖縄タイムス(2016年5月21日)

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「もうガマンができない」 うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかった事件から一夜明けた20日、県内では政党や市民団体の抗議が相次ぎ、怒りや悔しさが渦巻いた。
これまでに何度、「また」という言葉を繰り返してきただろうか。県議会による米軍基地がらみの抗議決議は復帰後206件。凶悪犯の検挙件数は574件。いくら再発防止を求めても、米軍の対策は長く続かず、基地あるが故に、悲劇が繰り返される。

日米両政府の責任は免れない。
20日、県庁で記者会見した16の女性団体の代表は、時に声を詰まらせながら、口々に無念の思いを語った。
「被害者がもしかしたら私だったかもしれない、家族だったかもしれない、大切な人だったり友人だったかもしれない」「基地がなかったら、こういうことは起こっていなかったんじゃないか」−涙ながらにそう語ったのは、女性と同世代の玉城愛さん(名桜大4年)。
死体遺棄容疑で逮捕された元米海兵隊員で軍属の男性が勤務する嘉手納基地のゲート前では、市民らが「全基地撤去」のプラカードを掲げて事件発生に激しく抗議した。
政府によって「命の重さの平等」が保障されないとすれば、私たちは、私たち自身の命と暮らし、人権、地方自治と民主主義を守るため、立ち上がるしかない。
名護市辺野古の新基地建設に反対するだけでなく、基地撤去を含めた新たな取り組みに全県規模で踏み出すときがきた、ことを痛感する。

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日米両政府の「迅速な対応」がどこか芝居じみて見えるのは、「最悪のタイミング」という言葉に象徴されるように、サミット開催やオバマ米大統領の広島訪問、県議選や参院選への影響を気にするだけで、沖縄の人々に寄り添う姿勢が感じられないからだ。
基地維持と基地の円滑な運用が優先され、のど元過ぎれば熱さ忘れるのたとえ通り、またかまたか、と事件が繰り返されるからだ。
沖縄の戦後史は米軍関係者の事件事故の繰り返しの歴史である。事態の沈静化を図るという従来の流儀はもはや通用しない。
オバマ大統領はサミットの合間に日米首脳会談に臨み、27日には、原爆を投下した国の大統領として初めて、被爆地広島を訪ねる。
その機会に沖縄まで足を伸ばし、沖縄の歴史と現状に触れてほしい。新しいアプローチがなければ基地問題は解決しない。そのことを肌で感じてほしいのである。

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県庁OBの天願盛夫さんは退職後、独力で「沖縄占領米軍犯罪事件帳」を執筆し、出版した。講和前補償問題に関する資料を整理・編集したもので、強姦事件、射殺事件、強姦殺害事件などの凶悪事件や軍用機墜落事故などが列記されている。あまりの数の多さに息が詰まるほどである。
なぜ今もなお、米軍関係者の事件事故が絶えないのか。根本的な問題は「小さなかごに、あまりにも多くの卵を詰めすぎる」ことだ。この事実から目を背けてはならない。