同一賃金の議論 まず正社員化を進めよ - 東京新聞(2016年4月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016041502000125.html
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政府は「同一労働同一賃金」の実現を、一億総活躍プランに盛り込む方針だ。しかし、本当に非正規労働者の待遇底上げにつながるのか。まずは、非正規の正社員化に取り組むべきではないか。
同一労働同一賃金」の実現は安倍晋三首相が一月の施政方針で打ち出した。雇用形態にかかわらず、仕事の内容が同じなら賃金も同じという意味で、形式はさまざまにせよ欧州では浸透している。
確かに日本では雇用形態による賃金格差は大きい。フルタイムの正規労働者に対するパートタイムの賃金水準(時給)はフランスが89%、ドイツが79%に比べ、日本は57%にとどまっている。
欧州では、雇用形態ごとの不利益取り扱いは禁止することを、EU指令で規定している。
日本にも、パートタイム労働法や労働契約法などで「差別的取り扱いをしてはならない」「待遇の相違は不合理であってはならない」などの均等、均衡待遇の規定はあるが、格差は大きい。法律に実効性を持たせるとともに、対象者の拡大が必要だ。
政府は有識者検討会で今月中に課題を整理し、五月にとりまとめる「一億総活躍プラン」に、目玉として盛り込む。不当な賃金格差事例などを示すガイドラインを作成するとしている。
自民党は、賃金の格差を「欧州諸国に遜色ない水準」に縮めることを掲げ、(1)勤続年数や能力に応じた昇給制度の導入(2)手当や福利厚生の格差是正(3)最低賃金の全国平均を時給千円に引き上げる−を柱とする提言をまとめた。
いいことずくめだが、本当に実現するのか、観察せねばなるまい。それに賃金は各会社の労使が決めることだ。正社員の給料が減れば、景気はきっと冷え込む。
全労働者に占める非正規労働者の割合は年々増えている。総務省によると二〇一五年は37%超で、ここ三十年で倍以上に膨らんでいる。非正規労働者の正社員化をまず、促すべきだ。
そもそも、政府・与党は「同一労働同一賃金」を本気でやろうとしているのか疑わしい。というのも昨夏、労働者派遣法改正案の審議で、野党が提出していた「同一労働同一賃金推進法案」を、維新の党との修正協議で、骨抜きにした過去があるからだ。
野党は格差是正を訴えており、政府・与党には選挙での争点化を封じる狙いがあるとみられる。もし選挙向けだけの話なら働く者をこれほどばかにすることはない。