http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016040602000210.html
http://megalodon.jp/2016-0412-0745-35/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016040602000210.html
国会審議で、腑(ふ)に落ちないことがある。憲法改正をめぐる安倍晋三首相の答弁だ。
自民党にとって現行憲法の自主的改正は結党以来の党是だ。すでに二次にわたり改正草案もまとめている。安倍氏が党総裁である以上、改正を目指すのは当然だろう。
国会でも「現行憲法の基本的考え方を維持することを前提に、必要な改正は行うべきだと考えている」と、堂々と答弁している。
しかし、安倍氏は首相でもあり、大臣として憲法擁護の義務を負う。にもかかわらず、首相の立場でなぜ、擁護義務とは相いれない改正論を展開できるのか。擁護義務を定めた憲法に反すると厳しく批判されて当然だ。
この際、首相=総理と、党総裁とを分けたらどうだろうか。「総・総分離」である。
安倍氏が改正に専念したいなら、首相を辞めて党総裁として陣頭指揮を執ればいい。国会議員にも大臣同様、憲法擁護の義務はあるが、改正の発議権は国会にあるので、首相でない方が自由に発言できるのではないか。
首相として国民の負託に応える道を選ぶなら、憲法改正など口にせず、現行憲法に忠実に従って職務に専念すべきだろう。改正の仕事は別の党総裁に委ねればいい。
総・総分離は自民党内でたびたび浮上する政治の知恵だ。「憲政の常道」に反するとの批判はあろうが、首相が憲法擁護義務を蔑(ないがし)ろにするよりはましである。 (豊田洋一)
日本国憲法
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。