教科書謝礼、公取が聴取 22社の担当者を独禁法違反疑いで - 中日新聞(2016年4月12日)

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016041202000255.html
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教科書会社が検定中の教科書を教員らに見せ、謝礼を支払っていた問題で、公正取引委員会は、謝礼を渡すなどの行為で公正な取引がゆがめられた可能性があるとして独禁法違反の疑いで、小中学校の教科書を発行する全二十二社の担当者の聴取を十二日から始めた。調査を進め、再発防止を求める排除措置命令や警告を出すか検討する。
独禁法は、不公正な取引方法の一つとして、不当な利益をもって競争者の顧客を自己と取引するよう誘引することを禁止している。公取委の杉本和行委員長は三月の参院予算委員会で「教科書発行者が、教科書の採択に関与する者に、経済上の利益を供与し、これにより教科書発行者間の公正な競争が阻害される恐れがある場合、独禁法上、問題になる」と答弁していた。
馳浩文部科学相は十二日の記者会見で、公取委が教科書会社に排除措置を命令した場合、教科書無償措置法に基づく発行者の指定取り消しも検討するとした。
謝礼問題は昨年十月、三省堂が公立小中学校長らに現金を渡していたことが発覚。ことし一月、教科書会社の自己点検を取りまとめた文部科学省が公表した調査結果によると、二十二社のうち十二社が検定中の教科書を教員ら延べ約五千人に見せ、うち十社は延べ約四千人に謝礼を払っていた。その後の各都道府県教育委員会の調査では、公立校で閲覧したのは延べ四千五百二十五人、うち謝礼があったのは延べ三千五百七人。
文科省は三月、閲覧した教員ら延べ約千人が教科書採択に関与し、閲覧した教科書に採択を変更したケースが約百件あったと公表。いずれも採択に影響はなかったとしている。
教科書業界を巡っては、戦後、国定教科書から検定制度に変わった後、金品を教員らに贈るといった行為が横行。業界は公取委から一九五六年に独禁法の特殊指定を受けた。採択方法が透明化されたことなどから二〇〇六年に特殊指定は廃止された。業界団体の教科書協会は〇七年に自主ルールを設け、選定関係者への金品の提供などを禁じた。