保育士不足 低賃金の改善が急務だ - 毎日新聞(2016年4月4日)

http://mainichi.jp/articles/20160404/ddm/005/070/055000c
http://megalodon.jp/2016-0404-1626-26/mainichi.jp/articles/20160404/ddm/005/070/055000c

この1カ月、「待機児童」問題が国会で繰り返し議論されてきた。その核心は保育士の低賃金だ。
政府の緊急対策は小規模保育所の定員拡大などが柱だが、狭い場所に幼児を詰め込むのは本質的な解決策ではない。保育士資格を持ちながら離職している人は70万人近くいる。保育士の待遇改善こそ急務だ。
「賃金が低い」「事故が不安」「休みを取りにくい」。保育所を辞めた保育士に関する各種調査で上位を占めるのがこうした理由だ。厚生労働省によると2013年時点の保育士の月収は20・7万円で、全産業平均の29・5万円を大きく下回る。
保育は女性が家庭内で行う無償労働のように見られ、高齢者や障害者福祉の職員より賃金水準が低いことは以前から問題視されていた。
今回の緊急対策は規制緩和が中心で、賃金に関しては具体案が示されなかった。政府は5月にまとめる「1億総活躍プラン」に保育士の待遇改善策を盛り込むというが、賃金増を確約したわけではない。
今回の緊急対策は規制緩和が中心で、賃金に関しては具体案が示されなかった。政府は5月にまとめる「1億総活躍プラン」に保育士の待遇改善策を盛り込むというが、賃金増を確約したわけではない。
野党は月額5万円引き上げる法案を国会に共同提出した。約2800億円の財源が必要で、保育士の数が増えるほど財源も膨らむため、政府は慎重な姿勢を見せている。
一方で、政府は低所得の高齢者に一律3万円を支給する「臨時福祉給付金」には約4000億円を計上している。給付金は1回限りの措置であり、恒久的な財源が必要な保育士給与とは単純に比べられない、「女性活躍社会」「出生率1・8」が看板政策の政権にとって優先課題は待機児童の解消ではないか。
特に若い保育士は深刻だ。新卒で手取りが15万円未満の人は多く、奨学金の返済をしている人は生活費にも窮している。企業で働く女性正社員の長時間労働に伴って、その子を預かる保育所で働く保育士の勤務時間も延びている。休みも取りにくく、保育の仕事にやりがいを感じながらも離職に追い込まれているのだ。
厚労省保育所に入れないために育休を延期した人などを含めると「待機児童」は当初の2・6倍に当たる約6万人に上ることを認めた。だが、認可施設以外だと自己負担が重くなるなど経済的な理由で結婚や出産をためらう人も多い。こうした人は6万人には含まれていない。
この先、若い女性の人口は減っていくため、生まれてくる子供の数も減る。できるだけ早く安心して子供を育てられる環境を整備しておかないと、出生率の改善は見込めない。人口減少や労働力不足への対策はこれ以上先延ばしできないのである。
保育士の待遇改善は、「待機児童」6万人のためだけではない。この国の未来がかかっているのだ。