(筆洗)音楽、歌はどこから生まれてきたのだろう - 東京新聞(2016年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016040402000139.html
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音楽、歌はどこから生まれてきたのだろう。母と子のコミュニケーションから生まれたという説がある。もちろん、それは子守歌である。
類人猿の赤ん坊は泣かないが、人間の赤ん坊はよく泣く。人間がゴリラなどと比較し、早い段階で赤ん坊を人に預けることと関係があるそうだが、泣きじゃくる赤ん坊をなだめ、落ち着かせるため、子守歌が必要になった。霊長類学者、山極寿一さんの『暴力はどこからきたか』に教わった。
四月四日は子をあやす「よしよし」にちなんで、「子守唄の日」だそうだ。どなたもご自分の一曲をお持ちだろう。最近の研究では赤ん坊の痛みまで軽減する効果があるそうで、ありがたい歌である。
ねんねんころりん>とは、子守歌によく登場する囃(はや)し文句。<ねんねん>は「寝む寝む」で、<ころりん>は「子らよ」からきているそうだ。
西舘好子さんの『「子守唄」の謎』によれば、この「おまじない」の歴史は古く、鎌倉末期の書物にその原型を見つけることができる。<ねんねんねんねんろろろろ>。聖徳太子を寝かしつけた文句だそうで事実ならば<ねんねんころりん>の歴史は六世紀まで遡(さかのぼ)れる。
<春雨や明けがた近き子守唄>室生犀星。「明けがた近き」とは子守歌も大変な負担である。母と子から歌は生まれたと書いたが、父親が歌い手を積極的に引き受けるのは当節の常識である。