プルトニウム 運搬船、茨城・東海村到着 近く米へ返還 - 毎日新聞(2016年3月22日)

http://mainichi.jp/articles/20160322/ddm/002/040/062000c

核物質の管理強化を進める米国の意向で、日本が米国に返還することに合意していた研究用プルトニウムなどを輸送するとみられる専用船が21日、茨城県東海村の港に到着した=写真・本社ヘリから。日本原子力研究開発機構が保管していた核物質を積み込み、近く米国に向け出港する。
返還されるのは、高速増殖炉開発の研究を目的に、1960年代に米英などから提供されたプルトニウム331キロなど。大部分が軍事転用可能な高濃度のプルトニウムで、核兵器数十発分に相当するという。
米核監視団体「サバンナリバー・サイト・ウオッチ」によると、輸送する船は英船籍の2隻。これほど大量のプルトニウム海上輸送されるのは、日本の「あかつき丸」が93年、高速増殖原型炉もんじゅ福井県)で使う約1トンをフランスから運んで以来。日米両政府は核物質防護を理由に、日時や輸送ルートなどの詳細を明らかにしていない。
受け入れ先は、米南部サウスカロライナ州にある米エネルギー省の「サバンナリバー核施設」で、到着まで数週間かかる見通し。【中西拓司、隅俊之】

国内外48トン残存 国際社会が懸念
核兵器への転用が可能なプルトニウムが近く米国へ返還されることは、日本政府が使い道のない余剰プルトニウムの削減に向け、やっと一歩を踏み出したことを意味する。しかし返還されるのは331キロ。国内外には約48トンのプルトニウムが残っており、「核武装」を懸念する国際的な批判は依然残りそうだ。
日本の核燃料サイクル政策は、原発から出た使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を原発で使うプルサーマル計画によって、プルトニウムを消費する計画だった。
しかし、原発の再稼働は進んでいない。国内で現在稼働しているのは、プルサーマル発電ではない九州電力川内原発の2基だけ。プルサーマルの予定だった関西電力高浜3、4号機は、今月9日の大津地裁の運転差し止め命令を受けて停止した。同じくプルサーマル四国電力伊方原発も、再稼働は今夏ごろになる見通しだ。
余剰プルトニウムについては国際的な批判が高まっている。トーマス・カントリーマン米国務次官補は17日の議会公聴会で「すべての国がプルトニウムの再処理から撤退すれば喜ばしいことだ」と指摘した。オバマ政権内には、日本の核燃料サイクル政策が「核拡散への懸念を強める」として、反対する意見が根強く残る。【小倉祥徳、ワシントン清水憲司】