(春秋)山本善彦さんは国家権力におもねる必要がない… - 西日本新聞(2016年3月13日)

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syunzyu/article/231034
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山本善彦さんは国家権力におもねる必要がない。組織や上司の意向に縛られることもない。あくまで自らの良心に従って判断を下す。彼の職権を拘束するのは憲法と諸法令のみだ。今回もその立場に揺らぎはなかったろう。
山本さんとは大津地裁の部総括判事。関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止める仮処分決定を出した。国や電力会社などは「承服できない」「司法判断で原発行政が揺れるのは迷惑」と反発している。
どうやら、司法の存在意義が分かっていないようだ。山本さんに限らず裁判官はすべて独立した存在。最初から国の基準を是認したり、過去の判例に従ったりすることが職責ではない。
むしろ複雑・多様化する世の中で、政治・行政が見失いがちな「人権」を見据え、時代状況に則した判例を示す役割を担う。だからこそ裁判官によって判断が分かれることもある。
今回の決定は原発自体を否定しているわけではない。「3・11」の教訓に照らせば安全対策にはなお不安がある−という国民目線に沿った判断だ。
最近は“ヒラメ判事”が増えた、と聞く。裁判所の人事権を握る最高裁の顔色ばかりをうかがい、国民目線が欠落した判事のことだ。無論、山本さんは当てはまらない。さて永田町はどうか。国会議員も本来は個々に独立した存在。なのに首相官邸の意向だけに流される“ヒラメ族”がうようよ。彼らの動きも差し止めたい。