覚せい剤事件で無罪判決 地裁立川支部「尿すり替えの可能性」 - 東京新聞(2016年3月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016031602000244.html
http://megalodon.jp/2016-0317-0927-11/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016031602000244.html

覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた東京都町田市の男性(47)に、東京地裁立川支部は十六日、逮捕、起訴の決め手となった尿が、男性のものと認められないとして、無罪(求刑懲役二年)を言い渡した。
判決で深野英一裁判官は、警察が鑑定の段階で「他人の尿にすり替えた可能性を否定しきれない」と指摘。強制採尿の際に虚偽の調書が作られていたことも指摘し「捜査は極めてずさんで、およそ信用できない」と非難した。
検察は、男性の尿を検査した結果、覚せい剤の陽性反応が出たとする警視庁科学捜査研究所(科捜研)の鑑定書を証拠提出していた。しかし、同支部は証拠として認めていなかった。
男性の弁護人によると、男性は逮捕後から、一貫して容疑を否認している。通常、覚せい剤取締法違反容疑の事件では、容疑者から採取した尿の保存容器に、容疑者の署名や指印が入ったシールで封をする。
しかし、公判で証拠として提出された尿の保存容器には、白紙のシールが貼られていたという。男性は公判で、捜査段階でシールに署名したと証言している。
男性は昨年三月二十五日に警視庁町田署員に職務質問され、採尿を拒んだ後、令状に基づき強制採尿させられた。東京都内や神奈川県内などで覚せい剤を使ったとして五月に逮捕され、六月に起訴されていた。十一月に保釈されている。
判決は、強制採尿から逮捕まで一カ月以上経過しており「相当日数、事件処理を放置していた」と、捜査のずさんさも指摘した。
男性はグレーの上下スーツ姿で法廷に出廷。深野裁判官は「被告人は無罪」と言い渡し、退廷する際には「お疲れさまでした」と声を掛けた。
弁護人は判決後、取材に「科捜研の鑑定書は、被告に弁解を許さないほどの強い証拠。それなのに尿が本人のものか確認されずに作られていた。この実態からすれば、過去にも尿のすり替えがあったと疑わざるを得ない」と話した。
東京地検立川支部は、控訴や関係者の処分について「判決内容を精査し、対応を検討したい」と述べた。