法制度・規制:原子力発電の新規制基準を疑問視、再稼働禁止の仮処分決定で - スマートジャパン(2016年3月11日)

(1/2)http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1603/11/news043.html
(2/2)http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1603/11/news043_2.html

滋賀県の住民が大津地方裁判所に求めた高浜発電所3・4号機の再稼働禁止に関する仮処分が3月9日に決定した。福島第一原子力発電所の事故原因が究明されていない現状では、原子力規制委員会による新規制基準に疑問があると裁判所が判断。原子力発電の経済性よりも国民の人格権を重視した。
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津地裁の判断は世界最高水準かどうかに関係なく、現在の新規制基準に問題があることを指摘した。福島第一原子力発電所の事故原因が究明できていない状況では、津波が主な原因と特定することはできない。そのほかの要因を含めて徹底的に究明したうえで、「十二分の余裕をもった基準」を策定して安全対策を実施すべきであると強調している。

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さらに原子力発電の経済性と環境破壊の危険性について、明快な主張を展開したことも注目に値する。「原子力発電所による発電がいかに効率的であり、発電に要するコスト面では経済上優位であるとしても、(中略)、環境破壊の及ぶ範囲は我が国を越えてしまう可能性さえある、(中略)、単に発電の効率性をもって、これらの甚大な災禍と引換えにすべき事情であるとはいい難い。」
津地裁原子力発電の経済性よりも重視したのは国民の「人格権」である。人格権は個人が社会生活を営むうえで必要な利益を保護するための権利で、生命・自由・名誉などの利益を侵害すると不法行為になる。原子力発電所の周辺地域に暮らす住民が人格権の侵害のおそれを理由に運転の差し止めを求めることに理解を示した。
本来は人格権の侵害について原告側の住民に立証責任がある。ただし原子炉施設の安全性に関する資料の多くを電力会社が保持していることなどを理由に、大津地裁は電力会社側が資料を明示して立証すべきと結論づけた。関西電力が仮処分の不服申し立てを実行した場合には、原子力発電所の運転によって周辺住民の人格権を侵害するおそれがない点を立証する必要がある。

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原子力発電が国益に見合わなくなったことを多くの国民が感じている。電力の安定供給や電気料金の値上げ抑制の面でも、原子力なしで十分に実現できる状況になってきた。残る課題は温暖化対策だが、再生可能エネルギーや水素エネルギーを最大限に導入することで解決の道は開ける。
政府と電力会社は原子力発電所の再稼働に多大な時間と経費を注ぎ続けるよりも、未来志向のエネルギー政策に早く転換すべきだ。決断が遅くなるほど電力会社の体力は衰えていく。

関連サイト)
仮処分命令申立事件(高浜3,4号機)について、再稼働差し止めの仮処分決定 - 福井原発訴訟(滋賀)支援サイト(2016年3月9日)
http://ur0.link/szRz

津地裁
高浜原発の再稼働差し止めの仮処分決定を出す。

仮処分決定(1/2)
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/e9782c2ea5fefaea7c02afd880dd3bfc.pdf
仮処分決定(2/2)
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/b6c5742c4f89061d95ceb8a0675877e2.pdf