原発再稼働なくても余力 節電定着、夏の需要13%減 - 東京新聞(2016年3月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201603/CK2016031102000120.html
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東日本大震災による東京電力福島第一原発事故から五年を経て、電力需給を取り巻く環境は大きく変わった。原発の危険性が再認識され、全国の原発は次々と停止。九日には大津地裁関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分を決定し、十日に稼働中の原発が停止した。震災後は電力の供給が厳しくなる時期もあったが、利用者の節電意識の高まりや発電所の増強で、最近二年間は原発の稼働がなくても余力を確保できている。 (岸本拓也)
東日本大震災津波で福島の原発を含め、沿岸部の発電所が被災。東電管内では電力不足が叫ばれ、五年前には計画停電が実施された。東京都心部などではネオンが消え、夜の街は真っ暗になったが、電力不足による突然の大停電は回避した。
問題は電力の利用が最大となる夏場。電力は需要が多すぎても、供給がだぶつきすぎても周波数が乱れて停電を引き起こす恐れがある。需要に見合った供給と、ほどよい余力を確保することが必要だ。供給力が足りない中で、企業や家庭は徹底した節電に迫られた。
その結果、省エネ生活が定着し、震災前より夏の需要は大きく減った。原発を持つ大手電力九社の二〇一五年夏の最大需要を合計すると、東日本大震災前の一〇年夏と比べて13・5%減少した。加えて、電気料金が割安で自家発電した電力を販売する新電力への契約に企業が切り替え、大手はその分の需要も減った。
利用者の節電だけでなく、供給面の取り組みも進んだ。老朽化した火力発電所に加え、新しい火力発電所も運転を始めた。夏の需要ピーク時に発電能力を発揮する太陽光発電も一五年夏には導入量が前年から倍増。原発十二基分の出力に相当する計千二百万キロワットの電力を生み出したこともピーク時の供給を下支えした。
発電に占める原発の依存度が五割近くあった関西電力でさえ、火力発電の増強や中部電力などから電力の融通を受け、原発稼働ゼロで夏場を乗り切った。
五年間の対策が進み、全国の需要に対する供給余力は一〇年の8・5%から一五年に11・1%に増え、十分確保された。電力業界が「安定供給のために原発は必要」(電気事業連合会八木誠会長)と繰り返している主張は年々、説得力を失いつつある。