福島原発事故の国民負担は約11兆円 - 日本経済新聞(2016年3月7日)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98110430X00C16A3000000/
http://megalodon.jp/2016-0307-2221-27/www.nikkei.com/article/DGXMZO98110430X00C16A3000000/

日本政府は原発事故の費用に関する数字を何一つ発表していない。だが、大島教授はこれまでで最も掛かった費用は企業や避難者に対する賠償金で6兆2000億円、次いで福島原発周辺の除染費用が3兆5000億円、そして、廃炉費用の2兆2000億円だ。
賠償金と廃炉費用は東電が払っているが、同社は政府から支払い能力維持のための補助金をもらっている。理論的にはこれは東電やその他の原発事業者への賦課金として政府に戻ることになっているが、最終的にこれを負担するのは電力の使用者であることから、これは別の名目で国民から徴収する税金だといえる。
また、4月1日から日本の電力市場で競争が自由化されるのに伴い、これまで通りの賦課金が維持できるかも疑問だ。東電の広瀬直己社長は最近のインタビューで、同社が福島第1原発廃炉に充てる十分な収入を確保できると主張した。
東電の負担状況を把握する一つの方法は株価を見ることだ。株価は過去の損失と市場が予想する今後のすべての負担を反映しているはずだ。東電の株式は原発事故前日の2011年3月10日以降2兆6000億円を失った。債権者は損失を被っていない。
このため、東電は全費用の20%をやや下回るほどしか負担しておらず、残りの10兆7000億円は納税者が負担する計算になる。これは概算で、日本の全原子炉の停止による費用は加味されていないため、この全費用と国民の負担は低めに見積もられている。
東電と財務省経済産業省はこの試算についてのコメントを拒否した。政府関係者は東電が最終的には全費用を弁償することになると主張している。
By Robin Harding
(2016年3月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)