(私説・論説室から)会計検査院と秘密保護法 - 東京新聞(2016年3月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016030902000140.html
http://megalodon.jp/2016-0309-0942-12/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016030902000140.html

特定秘密保護法会計検査院はどう関係するのだろうか。
政府は先月下旬の衆院予算委員会の理事会で、この問題について統一見解を示した。
ポイントは安全保障上著しい支障が生じる場合に提供を拒否できるとする特定秘密保護法の条項を適用するかどうか−だ。
政府の見解は「特定秘密の内容、入手の経緯のほか、保護措置の度合いによる」とした。同時に「一定の特定秘密の提供が、当然にわが国の安全保障に著しい支障を及ぼすというものではない」とも指摘した。
何とも分かりにくい。要するに「内容次第」という意味ではないだろうか。すると、これは憲法上問題になる。会計検査院憲法九〇条で、国の収入支出の決算を検査すると定めている。政府から独立した機関なのだ。
戦前の大日本帝国憲法にも、会計検査の定めがあったが、“抜け穴”があった。政府や軍部の機密費は検査の対象外だった。軍秘密漏えいを罰する軍機保護法もあり、膨大な軍事関係予算を監視できなかった。
日本国憲法の規定は、当然、この反省の上に立っているはずだ。今度は「特定秘密」という“抜け穴”を許すのだろうか。そうだとすれば、事実上の憲法無視となる。そもそも検査を受ける側である政府が、独立機関たる会計検査院に出す文書を選べるはずがない。 (桐山桂一)