(筆洗)警察に電話する。ところが、出たのは音声ガイダンス - 東京新聞(2016年3月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016030702000154.html
http://megalodon.jp/2016-0307-0956-47/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016030702000154.html

少年が双眼鏡で近所を観察していたら「殺人事件」を目撃してしまう。警察に電話する。ところが、出たのは音声ガイダンス。
「こちらは警察レスキュー電話です。罪名がお分かりの方は1のボタンを。リストから罪名を選びたい方は2を押してください」…。一刻も早く伝えたいのにこの調子。少年は電話を叩(たた)きつける。米テレビ漫画の「ザ・シンプソンズ」にそんな場面があった。
漫画とはいえ、気持ちが分かる。音声ガイダンスを好む方はあまりいないだろう。パソコンが動かず、焦っているのにプッシュボタンの1を押せ、2を押せ、その他は…では、渋々対応されている気にもなる。
児童虐待の通報や相談を二十四時間受け付ける全国共通ダイヤルの「189」。昨夏に導入されたが、音声ガイダンスの時間が長すぎて、途中で切ってしまうケースが続出した。
厚労省は改善に取り組むというが、切りたくなるのは当然でもある。電化製品の修理依頼ではない。通報にせよ、相談にせよ虐待という口にするには勇気がいる深刻なテーマである。間延びしたガイダンスがその決意をぐらつかせてしまう。
ある地域では81%の電話が途中で切れた。その電話が途切れなければ、防げた子どもの「痛み」や「叫び」もあろう。一日も早い改善を。「189」の番号は「いち早く」と覚えた。「いっぱい苦」ではなかったはずだ。