経済苦で高校中退、全国に5千人超 授業料無償化5年、支援に課題 - 西日本新聞(2016年3月7日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160307-00010017-nishinp-soci
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高校授業料無償化が始まった2010年度から5年間に、経済的理由で高校中退を余儀なくされた生徒が全国で5385人、九州で少なくとも754人に上ることが、西日本新聞のまとめで分かった。経済的理由による長期欠席者(年間30日以上)も14年度だけで、全国で2044人、九州で少なくとも約100人。経済苦で学びたくても学べない子が多数おり、授業料免除や現行の奨学給付金制度では、親の所得格差が子の教育格差を生む「貧困の連鎖」を断ち切れていないことが浮き彫りになった。
文部科学省は毎年度、全国の国公私立高校を対象に、中退や長期欠席の理由を調査。経済的理由をはじめ、中退は学業不振など8項目、長期欠席は不登校など4項目の分類から選択させ、全国総数など一部を公表している。
『経済的理由』でなくても、貧困が要因の『学業不振』などに分類される事例も
本紙は、同省や九州の各県市などに10〜14年度の経済的理由による高校中退者と長期欠席者の数を質問。「文科省の公表データ以外は出せない」とした熊本、大分両県以外から回答を得て集計した。
14年度は、経済的理由による中退者が全国で1208人。九州は福岡47人▽佐賀1人▽長崎9人▽熊本27人▽大分9人▽宮崎5人▽鹿児島80人−の計178人。長期欠席者は九州で少なくとも計98人。2県を除く九州の公私立別で中退者は公立28人、私立114人。長期欠席者は公立52人、私立46人となっている。
高校では、授業料以外に教材費や修学旅行費の積み立て、通学費なども必要。教育費以前に、家計を支えるために働かざるを得ないケースもあるという。
複数の自治体の担当者は「『経済的理由』でなくても、貧困が要因となって『学業不振』などに分類される事例も多い」と話した。
14年度から高校授業料無償化制度に所得制限が導入され、同時に低所得層の私立高生への就学支援金は加算。返済不要で使途を限定せず、授業料以外の修学旅行費や教材費などに充てられる高校生等奨学給付金制度も始まったが、なお課題は多い。

実態はもっと多い
子どもの貧困問題に詳しい湯澤直美・立教大教授(社会福祉学)の話 文部科学省が把握している高校の中退理由は、選択肢から一つだけを選ぶ方式のため、複数回答にすれば「経済的理由」はさらに多くなるだろう。不登校の定義も病気や経済的理由によるものを除いており、調査方法の改善が必要だ。義務教育であっても学校納付金がかかり、高校ではより保護者負担が増える。教育格差を解消するには、授業料以外の諸費用を含めた「完全無償化」が望まれる。