熱血!与良政談 これはシールズ効果だ=与良正男 - 毎日新聞(2016年3月2日)

http://mainichi.jp/articles/20160302/dde/012/070/012000c

民主党と維新の党の合流が決まる一方、共産党は夏の参院選で、改選数1の「1人区」は原則として独自候補を取り下げて野党候補の一本化を目指す方針を決定した。
世論調査を見ると、民・維合流に対する世間の期待は高くない。党名を変えても、その傾向は変わらないように私も思う。
でも何もしないよりも、よほどましではないか。安倍政権の支持率は確かに高いが、今の「安倍晋三首相1強」「自民党1強」状況に不満を持っている人は少なくない。そんな不満や批判の受け皿が、あちこちの党に分散しないで絞られていくのは決して悪い話ではない。
与党は「野合だ」(元々は下品な言葉だが)と批判を強めていくに違いない。しかし、野党協力をどう受け止めるかも有権者の判断である。
それにしても、と改めて思う。彼らの影響力は大きかったなあ、と。昨年の安全保障関連法案審議の際、国会周辺を中心に反対デモをリードした学生団体「SEALDs(シールズ)」のことだ。
関連法成立後の昨年10月、シールズのメンバーは「参院選に野党の統一候補が出るなら応援する。野党は政策や立場の違いを超えて選挙協力してほしい」と訴えていた。
これにいち早く反応したのが共産党だったと認めていい。一時、難航していた民・維の合流話も、共産党が先んじて「独自候補取り下げ」を表明したことが、「こちらもモタモタしているわけにはいかない」と民・維両党の背中を押したとも聞いた。
既に各地でシールズのメンバーと地元の市民団体や学者らが連携して組織作りを進める動きが出ている。野党はそれをもはや無視できないということだ。若者が行動を起こして声を上げれば、政治は変わるのだ。
衆院選との同日選になれば別だけれど、参院選は政権選択には直結しない。総じて言えば現政権の中間評価だ。もちろん安保関連法や憲法だけが争点ではないが、逆に安保法制や憲法を投票の判断基準にする有権者がいても一向に差し支えない。
成立してしまえば、とかくあきらめがちで、忘れがちな私たちだ。再び安保法制への関心を呼び起こすことができるかどうか。シールズにとっても、私たちメディアにとっても課題となる。(専門編集委員